▲生産管理に関わる皆さん

DUEL Vietnam Inc.

品種3,200、手作業9割の日系ベトナム工場

現地社員と共にTPiCS導入に挑戦

DUEL Vietnam Inc(. 以下デュエルベトナム)はホーチミン市郊外の工業団地に工場を構える釣り具メーカー。

2021年、旧システムからTPiCSへの移行を決定。しかし製造する釣り具・浮きの品種は3,200種で製造工程の95%は手作業、という多品種少量生産の現場であることから、現地社員より新システムの導入に対する不安が噴出。約2年間の停滞の中、SI会社(有)ソルパックベトナ

ム(以下SI会社)も粘り強い打ち合わせのもとTPiCSの利点を生かしながら現場の要求を満たすシステム導入をサポート。現在ではトラブルのないスムーズな稼働に加え、中間在庫の削減などの成果も。現地社員からも高く評価される生産管理システムとして定着している。



イカ用釣り具3,200種を開発・製造

 デュエルベトナムは2005年、福岡県福岡市に本社を置く釣り具総合メーカー㈱DUELの子会社として設立された。「イカ釣り」用の釣り具と浮きのみ特化して開発製造を行っているが、その品目数はなんと3,200種を超える。

 「1つ新規の釣り具を開発すると通常2.5 インチ、 3 インチ、3.5 インチ3種のサイズを用意。さらに各インチに対して大体15色ずつ展開されるため、この時点で最低でも45品番が加わります。その後の新色追加や、重りの質量の変更やラトル*の有無なども加味

するとさらに品番は増える。そのうえ一度できた製品は基本的にずっと残りますから、現在の品目数になっているわけです」

 そう説明するのは同社の勝野洋二法人代表。ここまで多品種のイカ釣り用の釣り具を開発・製造しているメーカーは世界でも珍しく、世界でも1、2を争うメーカーだと自信を見せる。最小ロット数は150個からだが、月産数は平均で30万個以上。イカ釣りのハイシーズン(5月、9月)には60万個に達することも。

そしてそんな多品種少量の生産現場を支えるのが300名近い現地ワーカー(作業者)だ。

 小さな1つのルアーは完成までに多くの工程をたどる。まず射出成型でボディ部分を成形し、その後スプレー塗装や箔押し加工を行う。そしてさらにパット印刷で蛍光色の色付けをした布を巻き付けて縫合。目や足などの各種パーツを取り付け、曲げ加工を施した針を装着してやっと完成だ。どの工程も完全自動化は難しく、特に布の巻き付けやパーツの縫合などは完全な手仕事。実際製造工程の95%は手作業だという。


*釣り具内部に挿入される金属性の粒。海の中でカシャカシャと音を立て、海中のイカを刺激しおびき寄せる。


 ▲勝野 洋二 法人代表


旧システムからの移行を決断

 そんな同社が生産管理システムとしてTPiCSの導入を決定したのは2021年のこと。それまで使用してきた旧システムは過去に在籍した社員が既存のシステムを独自にカスタマイズしていたものであり、今後のアップデートは難しい。すでに本社や、別子会社であるフィリピン工場でも導入が決まっていたこともあり、ベトナム工場もこれを機会にシステムを一新するよう指示があった。本社にてTPiCSの基本性能の説明を受けた勝野代表は、『f-MRP』による需要変動への対応力に魅力は感じるも不安があった。同社では本社が確定させた注文を受注後、3か月の納期で材料発注、製造、梱包発送する。納期の変動は少なく基本的には「お客様には3か月納期で納得いただく」(勝野代表)が、多品種少量生産に加え、本社からの注文自体は1日に数回変更が入ることも。これらにシステムが臨機応変に対応してくれるか、確信が持てなかったのだ。しかし一方で期待もあった。旧システムは手入力が多く手間がかかり入力ミスの危険もぬぐえない。新システムが上手く稼働すれば人員削減(異

動)とミスの撲滅が可能となる。

 ▲パット印刷の工程

 ▲多いときで月産60万個を製造


 ▲在庫や原材料の保管庫

 ▲布巻きなどの手作業工程


不安を上回った新システムへの期待

 導入に際して勝野代表は全体の責任者としてIT担当者であるレ・クア・ホアン氏を指名。そのほか原価管理・会計管理などを担当するタック・キム・ハン氏、生産管理・購買を取りまとめるズオン・ゴック・タン氏2名にも導入に関する意見を出しながら適宜サポートをするよう頼んだ。ところが当初ハン氏とタン氏、そしてそのほかのスタッフは導入に後ろ向きだった。多品種少量生産、しかも同社のように手作業がほとんどの現場の生産管理は複雑。問題なく稼働しているシステムがあるのになぜわざわざ一新する必要があるのか、という声が大きかったのだ。勝野代表は個人差はある、としながらも

「ベトナム人は何事も変化に後ろ向き。難色を示すであろうことはある程度予想していましたが、思ったより反発は強く計画は停滞しました」と当時を振り返る。

 しかし一方ホアン氏は新システム導入には前向きだった。IT担当者として新しいテクノロジーには興味があったのだ。

「旧システムは結局、生産の実績管理程度の機能に他のシステムと組み合わせており実際の工場管理はExcel 中心。細かな工場内の状況はシステム上で見えていないことも多い。改良できるならチャンスを生かした方がいい」

 その後、何度もSI会社とやり取りをしていく中で少しずつハン氏、タン氏も前向きに。当時の気持ちを笑いを交えつつハン氏も振り返る。

「ホアンの言うように旧システムでは各製品の中間在庫は見える化できておらず現場に確認に行くことも多々ありました。もし新システムでそれらが見えるならもっと在庫管理は簡単で正確になる。せっかくチャレンジするなら沢山相談してできる限り要望を伝えよう!と決めました」

 この間、SI会社と現地担当者の間では長い時間をかけ基本のシステムの理解を進めるための研修や現場からの要望のすり合わせが行われていた。システムの制約や予算の関係上、ハン氏が考えたすべての要望を叶えるような調整はできない。TPiCSの利点を生かすためにもある程度は生産現場がシステムに合わせていくことも重要だ。勝野代表はすべてのやり取りをメールなど文章で行うように指示。時には双方に意見を伝え粘り強く見守った。また特にホアン氏が負う負担を鑑みてあらかじめ昇給。責任を自覚してもらうと同時に期待と感謝の気持ちも込めた。

     ▲ IT担当:レ・クア・ホアン氏

      ▲ 原価管理・会計管理担当:

         タック・キム・ハン氏

        ▲ 生産管理・購買:

          ズオン・ゴック・タン氏


現場作業者に合わせた調整

 ▲各作業場で活躍する「ルアー製造の鍵」となる熟練工の皆さん

 新システムを使用するうえでハン氏、タン氏が一番調整を希望したのはデュエルベトナムならではのものだった。前述のように同社は300名の作業者が手作業で釣り具を製造する。それぞれに担当している工程・習熟度が違うため、その日に在籍している人材に合わせて作業を振り分ける必要があるのだ。現状のままでは1日に必要な生産量(個数)の総数が指示されるため、これを作業者毎に振り分けるようシステムを調整。いよいよデュエルベトナムでのTPiCS稼働の準備が整った。

 稼働準備では3名とも多忙を極めた。移行のためハン氏は再度社内にある製品マスタをすべて確認・整理し一つひとつ入力。通常業務を行いながら同時並行で行ったため負荷は大きかった。また、実際に代表製品マスタでの検証、試運転を経て運用してからもトラブルが続いた。導入当初は旧システムとTPiCSを同時に使用したため、指示書が2重発行されたり、マスタデータの構築に不備があり、ありえない生産数の指示が出たり。現場から困惑の声が上がるたびホアン氏やタン氏は現場に説明し解決に努めた。それぞれが苦労を重ねつつ運用するうち少しずつ課題が解消し2023年にはすべてTPiCSに統一。停滞期も含め約2年の準備期間を要したが、現在では導入によるさまざまな効果も表れている。


中間品・完成品の不動在庫数に変化

 わかりやすい変化が見られたのは中間在庫や完成品の不動在庫の減少だ。今まではシステム上で正確な中間在庫(仕掛り品)の数が見えづらく、また本社からの発注量変更に即応した生産指示ができていなかったため、当初の指示通りの個数で生産していたり、今後来るかもしれない変更を加味したアバウトな計算の元、生産指示を出していた。それらの積み重ねで少しずつ在庫が増え、年に数回本社に買い取りの依頼をする必要がでてしまっていたのだ。しかしf-MRPによる需要変動への迅速な対応が功を奏しこれらの買い取り依頼をする回数は減少。現在では行っていないという。また勝野代表が当初より期待したように入力作業が大幅に削減されたため今まで担当していたスタッフたちも他の仕事が手掛けられるように。事務方の業務効率化に大きく貢献している。

 日々TPiCSを使用するハン氏もその有用性を実感している。

以前は急を要する生産品の進捗状況や在庫の状況を確認するためよく現場に足を運んでいたが現在ではすべてTPiCS上で一貫して確認が可能。月に1度の棚卸で在庫数が合わない、などのトラブルもあちこちを確認せずともシステムをさかのぼっていけば簡単に原因を見つけることができる。生産時になって判明する在庫不足などのトラブルもほぼなくなったという。またタニ氏も同じく現場の状況把握の面でTPiCSを評価している。

「システム上前工程の実績が入っていないと次工程へ進めないため、工程抜けがなくなり遅延の把握がしやすい。また遅れの原因が、作業遅延なのか不良多発なのかなどを見極めやすくなり、おかげで早めの対策につながっている」(タン氏)

 ▲TPiCS使用の様子


生産管理システムのさらなる進化も期待

 現時点では旧システム使用時と同じくスムーズな生産管理が 実現できている。本来であれば一部手作業で行っている在庫管理などをすべてQRコード管理するなどの計画もあったが現時点ではアナログとシステムの両方を現場に合わせたバランスで使用している。勝野代表は社員全員が安心して使える現状を維持したいとしつつも『生産管理の未来』への期待を見せる。

「将来的には実績データを蓄積してそれをAIが分析しその結果を計画などに反映できるようになると聞き大変興味をもっています。当社でもAI活用したより迅速かつ自動の生産管理が可能となるかもしれない。今後に期待したいですね」

会社概要

DUEL Vietnam Inc.

▲工場全景

工場住所 No.38, Street No.4, VSIP1, Binh Hoa Ward, HCM City, Vietnam
本社住所

〒812-0039 福岡県福岡市博多区冷泉町5-35

       福岡祇園第一生命ビルディング 8階

設立

2005年

社員数 300人
URL https://duel.co.jp/ (本社HP)

主な製品例

 ▲ イカ釣り用ルアー


導入システムインテグレータ

Solpac Vietnam Co.,Ltd

日本発の生産管理ソリューションTPiCSをベトナムで提供するSlerです。在ベトナム日系製造業のお客様の業務最適化と生産性向上を支援しています。


住所:No 170 Tran Duy Hung Street, Yen Hoa Ward, Hanoi City,Vietnam

TEL:+84(24)35578527(代表)
MAIL:[email protected]

担当営業:根 弘

担当SE:ブイ・ティ・トゥイ・リン

https://www.solpac.vn