5Sと生産管理について

TPiCSレポートNo.73から抜粋
■生産管理に携わる人なら誰でも知っている“5S”について考えてみます。
私も若い頃は、“5S”を半分バカにしていたところがありました。
「整理、整頓なんて当たり前の話じゃないか。大の大人が今更そんなこと言わなくたって・・・」
しかし、年を取るにつれそれらの基本的なことがいかに大事であるか、またそれをきちんと実行することがどんなに難しいかが、よく解るようになりました。
“誰かに言われたから”とか、“何でこんなことまでしなければいけないのか”では、絶対に短納期生産は実現しません。
短納期生産を実現するのは難しいことです。
“イヤイヤやる”ようでは、それを実現するためのアイディアが出ないからです。
私は「TPiCSは難しい」と言われると「TPiCSが難しいのではなく、キチンと生産を管理(コントロール)することが難しいのです。短納期生産を実現することは更に難しいから、TPiCSがことさら難しいと感じてしまうのです」と申し上げます。しかし、毎月開催している研修会の中では 他にも説明しなければならないことがたくさんあるので「短納期生産を実現するためには、まず“顧客本位の物作りを本当にやろうと思うこと”が大事です」程度の話にとどめています。
“5S”というと、現場の資材や仕掛かり、また治具や工具など現場で使用するものを、常に整理 整頓 清掃し清潔に保ち、それを自ら進んで出来るよう躾を行うことですが、私はこの適用範囲を生産管理システムのデータやインプット作業にも拡げて考えれば良いと思っています。
私は従来から、生産管理は健康管理と似ている、と言ってきました。
適度な運動をし、バランス良い食事をとり、酒やたばこを適度におさえ、・・・・
と、やらなければならないことは全て解っている。しかし、それを毎日実行するのが難しい。
また、生産管理の難しさは多少血圧が高くても、多少血糖値が高くても、毎日生活できてしまい、自覚症状があまり無い、あるいは「皆こんなもの」と諦めてしまう。
しかし、以前のようにゆっくりしたペースで仕事できる時代なら多少コレステロール値が高くてもやってこられましたが、昨今のように速いスピードでものを作らなければならない持代になると、慢性病を抱えていて駆け出すのと同じようなものですから、それは出来ません、と 最近は言っています。
前回までのレポートで、短納期生産を実現するためには、計画をきちんと管理すること(計画管理)が重要です、と述べてきました。
短納期生産をするということは、生産計画を日々変えることになります。
その生産計画は、実行可能なものでなければなりませんから、日々新しい計画の実行可能性をシミュレーションする必要があります。
シミュレーションの結果が意味あるものであるためには、シミュレーションする計画が実態を表していなければなりません。
ということは、
○システムの中の生産計画に従い、全ての人が動かなければなりません。
○日々変わる計画が全て、システムの中の生産計画データに反映されていなければなりません。
計画を立てる側の変更を全て織り込まなければならないのは当然ですが、部品メーカさんからの納入遅延情報も、全て生産計画データに反映させなければなりません。なぜなら、納入遅延情報がシステムの計画データに正しく反映されていなければ、その部品は古い計画通りに納入されることを前提に計算されてしまうからです。
昔のように、3ヶ月先4ヶ月先の納期の部品を発注している時には、部品メーカさんが注文書をもらってから納品に問題があることを発見しても、納期まで時間がありますから、何等かの手を打って解決することが出来ます。しかし、部品の発注リードタイムを短くしていくと、注文書を受け取った時には、「もう間に合わない」状況になってしまいます。
短納期化をどんどん進めていくと、部品メーカさんから納期遅延を申し出るケースが増えてくるはずです。申し出が少ないうちはその都度個別に対応すれば良いですが、多くなるとシステムとしてきちんと処理出来なければなりません。
それを実現したのが「SCMオプション」です。
やらなければならない背景がはっきりしました。道具も揃いました。しかし、やらなければ何事も始まりません。
と言いながら、「ただやればいい」という訳にはいきません。
しっかりルールを決め、皆がそれを守らなければなりません。
基礎データを“整理、整頓”し、誰が見ても解るような状態にし、不要になったデータは直ぐに消し、サーバに登録されているデータを、常に生きている状態にしておかなければなりません。
これが、データの“5S”です。

■先日ご来社下さったお客様との会話です。
アメリカの会社の日本法人で、アメリカの本社から主要部品を輸入して、日本で組み立て調整をしている会社です。
「あるネックになる部品をアメリカから輸入していますが、その部品の生産が難しいらしく、しょっちゅうトラブルが発生し、直ぐ納期が変更になり困っています。生産数量や機種も増えてきたのでそろそろシステム化しなければならないと思うのですが、あまりしっかりした考え方のシステムだと当社の状況では、むしろ使えないのではないか、少しいい加減なシステムの方が良いのではないかと思っているのですが・・・」と、仰います。
正直に言って初めてのケースです。私の「計画管理」の考え方と、全く反対の考え方、あるいは「計画管理」の考え方を実践するのが非常に難しそうなお客様です。
私はいつものようにTPiCS-Xの説明をします。そして最後にSCMオプションをご覧に入れて、計画管理の重要性をご説明します。
「どんなにアメリカからの納期回答がイイカゲンでも、それを放っておいてはいつまで経っても問題は解決しません。お話の様子だと、問題の部品はそれほど多くないようなので、こまめに計画をメンテナンス出来ると思います。1万点の部品の納期が全てコロコロ変わり当てにならないなら、やりようはありませんが、少数の部品だけが問題なら何とかなります。それぞれアメリカから納期回答や変更の連絡があったら、このように生産計画表の中でドラッグ&ドロップするだけで良いのです。これなら出来そうでしょ」と申し上げます。
すると「確かにやることをやらなければ問題は解決しないですね」と仰って頂きました。
計画がコロコロ変わるとき、それに対応する考え方は2つあります。
①「どうせ変わるのだから、計画なんか作る必要はない」という考え方。
②「コロコロ変わる計画を常にフォローアップし、シミュレーションをし、前向きに計画を作って行く」考え方。
TPiCS、我々の考え方は、②です。
それを実現するためには、速い計算スピードと、簡単に処理できる操作性が必要です。
システムを開発する我々も大変ですが、この考え方で仕事をするユーザーも大変だと思います。だらだらとした仕事ではなく、きちんとした仕事をする。システム利用の“5S”が必要です。