▲従業員の皆さん
速くてシンプルな生産管理が奏功。
労務費換算で8割強のコストダウンを実現
インバースネット山口事業所はオーダーメイドPC「FRONTIER」の生産管理にTPiCSを導入、旧システム時代との比較で8割以上のコスト低減を実現した。機能を自由に選択できるTPiCSの柔軟性を活かし、短納期のモノづくりに必要な機能だけを残すシンプルな構成にしたのが特徴だ。「普通の製造業の生産管理システムとは異なるかもしれませんが、当社にとって理想に近いシステムになりました」と山口事業所所長の小林光二氏は話す。
ヤマダ電機グループのインバースネット㈱は、全国12か所で店舗展開する中古PCなどIT機器のリユース・リデュース・リサイクル事業と、オーダーメイドのBTO(受注生産)PCの組立販売という2つの事業を手がける。今回紹介する山口事業所は、後者の事業の生産・販売拠点である。
オーダーメイドPCとは、顧客のリクエストに応じて市場にあるパーツを組み合わせ、オリジナルPCに仕上げて販売する事業のことだ。同事業は、インバースネットと同じヤマダ電機グループの(株)KOUZIROが1993年に「FRONTIER」というプライベートブランド名で始めたもので、BTOPCの草分け的ブランドとして知られる。2013年にKOUZIROからインバースネットが事業承継し、今日に至っている。
山口事業所では現在、月間約3000台のオーダーメイドPCを生産する。ノートPCなど一般的なPCの注文にも応じるが、どちらかといえばゲームユーザーや設計者、個人投資家などに向けたハイエンドPCの生産を得意とする。販売形態はインターネットを介しての直接販売。ユーザーが楽天ショップ、YAHOOショップ、自社のオンラインショップなどのECサイトを通じて直接、同社に注文し、同社で組み立てて納品する。強みはリーズナブルな価格と納品までのスピードの速さ。「外資系PCに関する注文があった場合、同業他社では納品までに数週間かかるのが普通ですが、当社では3営業日~1週間で納品できます」(小林氏)。
▲小林光二氏
▲寶田貴博氏
▲世界各地から届くモジュール部品
山口事業所が立地する山口県柳井市の工場でオーダーメイドPC事業が始まったのは1999年のことであり、生産管理の歴史もこの時から始まる。初期の頃は汎用データベースソフトのAccessを用いて作成した自社製ソフトを使用したり、市販の販売管理ソフトに生産管理機能をアドオンしたソフトを使用した。
2010年には同事業所にとって初の本格的な生産管理パッケージ(以下、旧システム)を導入した。「時代背景として事業の拡大時期にあたり、経営トップも大規模なパッケージでないとこなせないと判断したのでしょう。確かにおよそ生産管理に関するものなら、何でも揃っていました」と小林氏。
しかし、「現場から見ると複雑すぎて使いにくいところも少なくありませんでした」とシステム部システム課の寶田貴博氏は打ち明ける。
同社の業務はPCパーツ(モジュール)を組み立てるだけなので、一般的な製造業に比べて工程がきわめてシンプルである。例えば大手PCメーカーなどでは細かな部品までを構成に入れるため、構成表はすごく大きくなるが、同社の場合はマザーボード、電源、OSといった具合にモジュール単位ですむため、ノートPCなどでは15~20点。デスクトップPCなどの大規模なものでも構成表は50点前後で収まる。
ところが旧システムは大規模で重いパッケージであるうえ、MRPを回す際もさまざまな複雑な処理を施して、ようやく製造指示が出せるというものだった。1回あたりの所要時間は40分。顧客から直接、受注し、短納期をウリとする同社にとっては使いにくかった。ある顧客から注文が入り、急いで製造指示を出さなければならない場合でも、少なくとも40分は待たなければならなかったのである。1台の端末がその時間を占有していると、出荷処理などが遅れるという問題もあった。
また旧システムには「社内発注」という手続きがあり、製造指示の1つ前に「受注して社内発注し、それを社内受注してモノをつくる」といったソフトウェア由来の複雑さがあった。「在庫のボリュームに関して営業側の責任在庫なのか、生産側の責任在庫なのかを明確にしてムダを省くことを狙ったものでしょうが、当社の事業規模から考えると、こういう機能は足かせになるだけで意味をなさなかったのです」(寶田氏)。そして、旧システムにいよいよ見切りをつける時が来た。
旧システムに替えてTPiCSを導入することになった直接のきっかけは2016年、旧システムのOSサポートを更新しないと継続利用ができない状態になったことである。旧システムは更新費用やバージョンアップ後の保守費用がきわめて高かった。そこで横浜市にある本社主導でTPiCSの導入へと動いたのである。
翌2017年6月、TPiCS導入が決まり、小林氏と寶田氏を中心とした推進体制ができた。その際、本社から出された指示は「翌年2月までの期内で本稼働させること」だった。その時の心境について寶田氏は、「こういう仕事をしているので、TPiCSの名前はもちろん知ってはいましたが、それ以上のことは何も知らなかったので、やはり不安はありました」と話す。当初、寶田氏が最も心配したのは、「ECサイトから入ってくる顧客ごとの構成を正確に取り込み、在庫を管理しながらモノづくりが行えるか」ということだった。「当社の生産業務は工程こそ少ないものの、生産に際してはお客さまごとに構成が全部違うので、それが管理できないとどうにもならないからです」(寶田氏)。しかし、TPiCS研究所で1週間の研修を受けると、その不安は完全に払拭された。ほかにも、マスターのスムーズな移行や項目の追加が可能かなど、気になっていたことがすべてクリアになり、「自信を深めることができました」と寶田氏。
▲組立製造現場
▲検品風景
▲TPiCS端末
寶田氏は旧システムの利用経験を経て、生産管理で重要なのは「システムが重すぎず、シンプルに使えること」という確信を持っていた。その思いがTPiCSとの出合いによって現実味を帯びてきたことを実感したのである。システムを入れ替えるとなると、「あれもやろう、これもやろう」と考えがちだが、同社の場合は新しい機能や複雑な機能は追わず、シンプルに業務を回すことだけを考えたのだ。
「TPiCSが便利なのは『この機能は使う。この機能は使わない』と取捨選択できることであり、われわれにとって、とても都合がよかったのです」と小林氏は話す。実際に原価管理機能をはじめ多くの製造業で当たり前のように使われているMRPによる部品や部材の購買機能さえもシステムの対象から外した。同社の業務は月や週ごとに受注変動が激しく、機械で購買計画を立てることが困難なためである。
「実は、旧システム時代にMRPを利用しようといろいろ工夫はしたものの、結局、MRPの結果通りに発注したことは一度もありませんでした」(寶田氏)。そこで、システムの入れ替えを機にMRPは一切使わず、製番オンリーで行くことにした。製番ならば回しても1回につきMRPの4分の1の10分ですみ、待ち時間が少なくなることも考慮した判断だった。
マスターの登録作業も、従来のような複雑で時間のかかる手続きを改め、簡素化した。「以前は生きているマスターは500件くらいでしたが、それでも担当者は傍目からも苦しそうに登録作業をしていました。ところが現在は1000件に増えているのに、逆に残業は減りました。それを見ても登録作業の簡素化効果は絶大だったと思います」(小林氏)。
同社には小林氏や寶田氏をはじめ、ITに強い社員が多く、TPiCSの機能を短期間のうちに修得できたことも見逃せない。製番展開のタイミングで製品を特定するシリアルナンバーの採番を行うシステムをはじめ、TPiCSと連携するシステムも、何本かは社内で開発した。
「『期内で本格稼働まで漕ぎつける』という指示を受けたときは、どうなることかと思いましたが、システム担当の寶田をはじめ、皆の頑張りもあって、期末からは余裕のある12月本稼働を達成することができました」(小林氏)。
同社では「一概に金額で表わすのは難しい」としながらも、「TPiCSの導入以来、経費的には5分の1以下になっていることは間違いない」としている。今後も受注即日出荷を目標にさらなる改善に努める考えだ。
株式会社 インバースネット
▲山口事業所社屋
代表者 | 山本 慶次郎 |
本社 |
〒221-0031
神奈川県横浜市神奈川区新浦島町1-1-25 テクノウェイブ100ビル8階 |
山口事業所 |
〒742-0021
山口県柳井市柳井5984-1 |
創業 | 1947年2月 |
設立 | 1951年12月 |
社員数 | 290人 |
資本金 | 1億2245万円 |
売上高 |
123億円(2018年2月期) |
URL |
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▲ワークステーション
▲NLKRシリーズ
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