▲精機部の皆さん

アサゴエ工業株式会社

工程ごとの仕掛り在庫を「見える化」。
鋳造部門への発注や生産計画の精度が向上。

アサゴエ工業の加工部門(精機第1、第2工場)の生産管理システムがフル稼働している。ベテラン社員による勘コツの生産管理を改め、TPiCSを活用してから6年。工程ごとの仕掛り在庫や作業進捗が「見える化」され、鋳造部門や協力会社への発注が適切に行われるようになった。当初、不安のあった実績の入力精度も向上。「いまや当社のDNAにすっかり溶け込んだ感じがします」と取締役本社企画部長の藤原芳夫氏は話す。



モノづくりリレーの第一走者

 アサゴエ工業㈱は、建設機械をダイナミックに動かす油圧部品や、重要保安部品である自動車用ブレーキ部品などの分野で、鋳造・機械加工のトップブランドとして成長を続けている。特に大型パワーショベル用の動力ポンプ、制御用バルブ、油圧モーターなどの油圧部品に強く、これらの建設機械向け部品が売上の75%、世界シェアにして25%を占めるメーカーである。

 創業は1957年。地場産業の畳表の自動折り機を製造する合名会社浅越機械製作所の鋳造部として発足。64年にアサゴエ工業㈱として独立した。折り機用部品と鉄道部品の鋳造から始め、その後、建設機械や自動車などの油圧部品の生産が主力になった。また当初は鋳造だけの業務だったが、1989年に精機部を発足させ、鋳造から機械加工まで手がけるようになった。工場は全部で4カ所。主に小物部品の鋳造を行う本社工場、多品種少量の機械加工を行う精機第1工場、大物部品の鋳造と機械加工(精機第2工場)を行う御津工場、そして20183月に操業を開始した精機第3工場だ。

 同社のつくる製品は、そのまま末端のユーザーに届けられるものではなく、多くは油圧機器メーカーに納品される。そこでさらに加工や組立が行われ、それが建設機械メーカーに届けられ商品になる仕組みだ。このため、「当社は素材メーカーとして、『モノづくりタスキリレーの第一走者』という大事な役割を担っていると自負しています」と藤原氏は話す。

 ▲鋳造ライン

 ▲鋳造電気炉

    取締役本社企画部長の藤原芳夫氏▲


ベテランの勘コツ頼りの生産管理

 ▲精機第1工場工場長の川村哲治氏

 しかし、そんな同社にも悩みがあった。生産管理のシステム化が遅々として進んでいなかったことだ。「恥ずかしい話ですが、ほんの10数年前まで、社内にある材料や仕掛品には現品票すら付いていなかったのです」(藤原氏)。材料手配から生産計画、工程管理、納期管理まで、各部のベテラン生産管理者の勘と経験に委ねられていたのだ。

 例えば、精機部では月間200300品種を加工するが、「ベテラン社員たちはそれらの品番や工程をすべて記憶していて、日々、入ってくる入荷伝票と現物を見ながら、材料の発注や加工工程などを指示していました」と精機第1工場工場長の川村哲治氏は話す。それでも、あながち的外れとは言えず、何とか回わっていた。しかし、その担当者がいないと誰も生産状況がわからない。また、発注量や在庫が本当に適切であるかもわからなかった。しかもベテラン社員たちの高齢化が進み、世代交代の時期が刻々と近づいていたのである。

 そんな状況を打開しようと動いたのが、藤原愼二社長の子息である藤原氏だ。大学卒業後、コンピュータ会社に就職。生産系のシステムエンジニアとして経験を積んだ後、2004年にアサゴエ工業に入社した。しかし、現実を目の当たりにして「ベテランの生産管理者たちが退職したら、当社は倒産してしまうのではないか」と危機感を募らせた。


業務多忙により立ち上げには至らず

 2007年、社内のすべての品物に写真付きの現品票を貼ることから始めた。まず、「モノがきちんと識別できる状態をつくることが大事である」と考えたためだ。そして、特定の人に頼る管理ではなく、誰にでもわかるように「見える化」することを目標とした。2年かけて現品識別を可能にし、その情報をデータベース化した。

 その後、精機部にTPiCS生産管理システムを導入し、工程別在庫のトレーサビリティを取る計画を立てたが、残念ながら立ち上げには至らず計画は頓挫した。2009年頃から受注量が急激に増え、精機第2工場の立ち上げや中国進出なども重なり、社内唯一のシステム要員であった藤原氏の業務が多忙をきわめるようになったのだ。

 以来、約2年間にわたり、同社のシステム化の取り組みは停止してしまう。「経験則として、生産管理システムの構築は、システム関係のところはベンダーさんに任せるにしても、自社の社員がきちんと寄り添わないと上手くいかないのです。『自分さえいれば何とかなる』と考えていた私自身の大失敗でした」と藤原氏。

 ▲精機第1工場内


再度システム化に挑戦

 世界の建設機械の需要が一巡した2011年半ば。この時をチャンスと見た同社は、再度TPiCSによる生産管理システムの構築に取り組んだ。過去の反省から、藤原氏のほか、鋳造部と精機部に1人ずつシステム要員を採用。各工場の生産管理担当者を含めたプロジェクトチームを結成した。またシステム化の経験が豊富なシステムインテグレーターの㈱ケイズ(本社=鳥取県米子市)岡山支店をパートナーとして選定した。同年11月にキックオフ。システム化の対象は精機第1、第2の加工職場(その後、精機第3工場も加わる)とした。

 鋳造部門を生産管理システムの対象外としたのは、鋳造現場は歩留まりが安定しないなど、正確に在庫を把握するのが難しいためだ。それに対し、加工機ごとに数の把握が可能な精機部から始めることにした。改めて導入システムを検討したが、MRPエンジンやカスタマイズ性、データベースの自由性など、やはりTPiCSが良いと判断した。


仕掛かり在庫を見える化

 プロジェクトチームが第1目標としたのは、精機部から鋳造部に対しての発注を明確にすることだった。発注を明確にするには、自分たちの実績を正確にとることが重要だ。そこで、ハンディターミナルを導入し、開始、終了と不良などをバーコードから入力する仕組みをつくった。

 また、精機部の製品加工工程は、34工程に分けられている。ところが従来は素材と加工完成品の2つしかマスタ登録されておらず、各工程の仕掛り在庫はベテラン担当者の頭の中にしかなかった。そこで、マスタを作り直し、A1A2A3という具合に枝番を設けて、品番を見るだけで何工程の在庫であるかわかるようにした。仕掛り中のものには+A1と「+」記号を付けた。それまでは、素材としての在庫はあることがわかっても、ほかの工程で使っているかどうかまではわからなかった。これに対し、枝番の管理により在庫を見える化し、加工指示を出しやすくしたわけである。

 しかし、「『実績をきっちり取る』というのは言葉では簡単ですが、慣れないうちは忘れや勘違いが多くて、準備期間中は期待する効果が得られない状況でした」と精機第1工場生産管理担当主任の大橋直治氏は話す。

 ▲精機第1工場生産管理担当主任の

  大橋直治氏


よりきめ細かな生産管理へ

 ▲TPiCSの画面

 ▲データ入力用のハンディターミナル

 20127月に本稼働。ただし、翌年1月くらいまでは、マイナス在庫が発生したときの対応や、製造指示とは違う作業をしてしまったときなど、現場のハンドリングとシステム処理がうまく機能しなかった。そこで運用開始から半年間かけて修正した。その間、毎週のようにミーティングを行った。こうした苦労の甲斐あって、時が経つにつれて実績精度は大きく向上。また、明確な発注を行うには、リードタイムをきちんと設定するなどの管理が大切なこと。そして、無駄な在庫をつくらず、仕掛り在庫や進捗状況がきちんと把握できれば、顧客に対しての納期回答も迅速に行えることなども社員間で共有できるようになった。

 TPiCSが軌道に乗ると、鋳造部のほうでも、精機部から毎月何tくらいの注文が入り、それに対して納期遅れがどのくらい発生しているかがわかり、仕事に対する取り組み姿勢にも変化が現れた。それらと併せて、調達加工先(加工外注)に支給する材料の相手先での在庫がどれくらいあるか、なども明確になった。「以前は、調達加工先から催促され、急いで用意することもありましたが、そういうこともなくなりました」(大橋氏)。 

 次なる目標はIoTを活用して設備の稼働状況を見える化することだ。精機部では複数台の機械を何人かで回している。業務の中には段取り替えや寸法計測も含まれるため、開始と終了だけでは、機械の本当の稼働時間はわからない。

 「社員と話しをすると、『もう一杯です』という言葉がよく出ますが、人の作業が一杯なのか、機械が一杯なのか、本人たちもよくわからないようなのです」(藤原氏)。現在の加工工程マスタには加工プログラムは含まれていないが、マスタを追加するなど柔軟性のあるTPiCSの機能を生かしつつ、一層の見える化と現場改善に取り組む方針だ。


会社概要

アサゴエ工業株式会社

▲精機第一全景

代表者 藤原 愼二
本社 〒701-0206 岡山県岡山市南区箕島557-4
TEL.086-282-0131 FAX.086-281-4246
創業 1957年6月
設立 1964年9月
社員数 400人
資本金 3300万円
売上高

85億円(2018年3月期見込み)

URL

http://www.asagoe-net.co.jp/

主な製品例

 ▲出荷を待つ建設機械向け油圧部品

 ▲仕上げ加工後の油圧部品


導入システムインテグレータ

株式会社 ケイズ

お客様のビジネスパートナーとして、業務改善に向けた

付加価値の高いITソリューションを実現致します。

 

700-0024 岡山市北区駅元町15-1 リットシティビル7F

TEL:086-259-0921

MAILinoue@kscom.co.jp

担当:産業第二営業部 井上 智行 、 梶川 州

http://www.kscom.co.jp