▲組立職場の皆さん

株式会社 富士

社内ルールを徹底し、精度の高い生産管理を実現。
4割以上あった納期遅れが実質ゼロに。

㈱富士の生産管理システムが力強い成長曲線を描いている。過去、幾度かの失敗を経て、藁をもつかむ思いで導入したTPiCSが今では職場の隅々にまで浸透。在庫や工程管理が適正化され、ひと頃は40%以上あった納期遅れも実質ゼロとなった。「最近は『技術は一流、管理は三流』なんて、誰からも言われなくなりました。現状に満足することなく、さらなる上を目指し果敢に挑戦していきたい」と藤井康代社長は笑顔で話す。



国産初のロータリー式耕運機

 岡山市に本社を置く㈱富士は、農業機械、建設機械、産業機械などの部品、ユニットのメーカーである。部品製造から組立までの一貫生産を特徴とし、野菜結束器などの完成品も手がける。1920年に藤井鉄工所として創業。

 1931年には、藤井康弘氏(藤井康代社長の父親)が日本で最初のロータリー式耕運機「丈夫号(ますらお号)」を完成させ、農業機械分野での歴史的快挙を成し遂げた。その後、株式会社 藤井製作所と改称し、東京証券取引所市場第2部に上場した農機具メーカーとして、「富士耕運機」「富士トラクター」と言う名前で世に出していたが、その後、ヤンマーディーゼル ㈱ 並びにヤンマー農機㈱と業務提携をして現在では「ヤンマー耕運機」「ヤンマートラクター」と呼ばれている。また、後年において分社化した㈱富士は、農機具メーカーであった工場設備を活かし、部品の製造から組立まで一貫生産で、幅広いニーズに応えられる強みを持った会社として今日に至っている。

 現在の岡山平野の耕地は約2万5000ヘクタール。その8割は干拓農民によって作り出されたものとされる。「父は、干拓農民の方々を重労働から解放するため、自分の利益にとらわれず、さまざまな農機具や機械を発明しました」と藤井社長。ピーク時には康弘氏個人で300件、企業として800件の知的財産権を保有。しかもその権利の多くは産業振興のために開放されたという。

 ▲昭和7年 国産耕運機 第1号機(エンジン2.5HP〈馬力〉)


技術は一流と言われたが…

◀溶接ロボット

 

ポジッショナー付三面テーブル ティーチング作業

▶NC三次元パイプベンダー

(パイプを三次元方向に曲げられる)

 ㈱富士の強みは高い技術力にある。中でも溶接技術やNC旋盤・マシニング加工での回転部軸受の製造などに長け、多くの得意先から高い評価を受けてきた。半面、弱点もあった。農業機械のユニット製造を例にすると、材料手配から機械加工、溶接、表面処理(塗装、めっき、熱処理)、組立など製造工程がきわめて長く、受注から納品までの適切な生産管理が難しかった。また、工程ごとに専門性が高いため属人化が進み、それぞれの作業者が個人的なルールで仕事をするなど、業務の効率化が遅れていた。

 もちろん、ただ手をこまねいていたわけではない。たとえば1980年代中頃には、当時流行していたオフィスコンピュータを用いた「生産管理らしきシステム」を導入した。しかし、受発注のやりとりをそれ以前と同様に口頭で行うなど、コンピュータはほとんど生かされていなかった。


過去のシステム導入はことごとく失敗

 こうした状況を誰よりも憂えたのは、2005 年に社長に就任した藤井康代氏だった。藤井社長はかねてより「『受注があったらその情報を正確に把握し、必要な材料を正確に注文する。また、製造にかかる日数を正確に算出し、工場の中では作業者に対して適切な指示を行い、皆で納期を守る』。それが製造業の務めであり、そのシステム化は不可能ではない」という信念を持っていた。そして何よりも、「現場管理者など一部の人に負荷のかかっている現状を解消してあげたい」と思ったのだ。

 しかし、その後も地元のソフトウェア会社にシステム構築を依頼したり、設備メーカーが社内用に開発したシステムを導入するなどの策を講じたものの、生産管理システムの導入はことごとく失敗した。実は、システム化がそれまで成功しなかったのは、システムそのものの問題よりも、社内体制や従業員の意識のほうが深刻だった。

 現場に対する明確な製造指示がなされていなかったので、生産管理に関してほとんどの作業者は興味を示さず、「製品ができたらそれで良し」という感じだった。「納期遅れは月に40% 以上あったと思います。納期が守れたものも、かなりの残業をして何とか間に合わせたものがほとんどでした」と製造部兼業務部部長の塩津聡氏は話す。

 ▲藤井康代社長

 ▲製造部兼業務部部長の塩津聡氏


効果はすぐには現れず

 度重なる失敗経験を経て2009年、藤井社長は藁をもつかむ思いでTPiCSシステムインテグレータであるアイティーコーポレーション社長の石井武志氏とコンタクトをとった。実は、過去に石井氏からTPiCSのプレゼンテーションを受けたことがあった。当時は他のシステムに決まりかけていたため導入には至らなかったが、好印象を受けていた。改めて説明を聞くと、「コンセプトがしっかりしていて、当社が最もやりたい個別受注品の工程管理が可能なシステムであることがわかり、導入を即決しました」(藤井社長)。

 だが、TPiCSを導入しても、効果はすぐには現れなかった。製造現場ではそれまでの失敗経験から、協力しようという意識すらなかったのだ。そのため、1年を過ぎても、改善できたのは仕入先に対して、口頭でのやりとりでなく、見積書、注文書、納品書など伝票扱いの徹底を要請し、購入品が見える化されたくらいだった。生産管理の担当者は部品構成と工程を入力していたが、現場との隔たりが大きく、在庫や残業は増え続けた。

 TPiCS導入時期の前後3年間は生産管理担当者が3人も交代するなど、現場と管理担当との意思疎通も図れていなかった。「このままではTPiCSも宝の持ち腐れになりかねない」。危機感を募らせた藤井社長は、製造部長の塩津氏を業務部長兼務の生産管理担当に据え、背水の陣で臨むことにした。


ルールを作り意識の統一を図る

 ▲整理整頓された部品棚

 塩津氏は、石井氏から生産管理システムの運用方法を習い、自らも猛勉強した。「わからないことがあると、深夜でも休日でも迷わず電話を入れましたが、文句ひとつ言わずに相談に乗ってくださるなど、大変お世話になりました」(塩津氏)。石井氏から授かった知見は多いが、中でも塩津氏が肝に命じていることがある。「余計な管理を減らすのが管理であり、システムあってのデータではなく、データあってのシステム」ということだ。

 塩津氏は製造部長の専任であった頃、Excelを使って製品から材料に至る一覧表を作成し、各職場の責任者から毎日の出来高を聞き取って消し込みをしていた。作業指示書が現場で紙切れ同然に扱われていたため、やむを得ず取った手段だったが、「今では、負荷のかかる作業を自らが行っていたことを、深く反省しています」と塩津氏。

 「現場の協力がなければシステムは動かない」。それを痛感した塩津氏は、石井氏から学んだ知識をもとに毎週、全従業員を集めて学習会を開き、社内工程のルール作りと意識の統一を図った。

 ㈱富士の製造現場は、大きく組立職場、機械職場、溶接職場の3つに分かれる。具体的には、それぞれの職場ごとに記号を割り振った。組立はA、機械はK、溶接はE、そして外注関係はFとした。この記号は、現場もシステム内も同じである。さらに、溶接職場であれば、それが何号機なのかがわかるようにE-1、2、3と記号を付ける。こうすることで誰にでもモノの置場所の所番地がわかる。品番のあとにも記号を付ければ、「これは機械加工のどの工程だ」とわかり、大まかな工程の進捗状況が把握できるわけである。

 実際にルールを作り、皆がそのルールを守るようになると、従来はさまざまな場所に無造作に置かれていた在庫がみるみるうちに減った。


在庫が減り、納期遅れがなくなる

 一番苦労したのは、皆に製造指示書通りに仕事をしてもらい、報告書を即日回収するというルールを徹底することだった。長年の習慣から、報告書を提出せずに帰宅してしまう従業員が後を絶たなかったのだ。そのため、現場の作業者を集めて、作業指示書がどんな役目を果たしているのか。「その日のうちに報告書を提出すれば、正確なデータが蓄積され、作業者自身の仕事も楽になる」ことなどを繰り返し説明したのだ。

 苦労の甲斐あってルールが定着すると、在庫はさらに減り、現場に空きスペースが生まれ、5Sなどの改善活動がしやすくなった。現場でシステムが見え、必要なものがわかるようになると生産活動にも余裕が生まれ、残業も減った。気がつけば、40%以上もあった納期遅れが約5%に低下。その5%の遅れも支給品の遅れに起因しているので、実質はほぼゼロになったのだ。

 システムが軌道に乗ると、営業に時間が取れるようになり、受注が拡大した。現場作業者のやる気も高まり、職場のムダとりに率先して取り組むようになった。しかし、それですべてが終わったわけではない。「TPiCSの中でも、使いこなしていない機能があり、それらを活用することが目標です」と藤井社長。㈱富士の業務は工程が多岐に渡り、段取り替えも多いため、時間換算での原価管理が難しい。ただし、昔とは異なり今はシステム化の下地が整っているため、決して不可能なことではない。当面の課題はTPiCSのもとで精度の高い原価管理を実現することである。

 ▲機械加工のライン

 ▲生産管理の端末


会社概要

株式会社 富士

▲本社社屋

代表者 藤井 康代
本社 〒704-8161 岡山県岡山市東区九蟠1119-2
TEL 086-948-5415 FAX.086-948-5416
設立 1920年6月
社員数 30人
資本金 3000万円
売上高 5億円(2017年7月期)
URL http://www.kfuji.co.jp

主な製品例

 ▲野菜結束器

  ▼耕運機・トラクターの爪軸


導入システムインテグレータ

有限会社 アイティーコーポレーション

長年にわたる導入実績に基づく経験とノウハウにより
TPiCS-Xの導入・立上げを誠心誠意サポートいたします。

 

〒710-0051 岡山県倉敷市幸町1番37号
TEL:086-430-2626
MAIL:ishii@shirakabe.co.jp
担当:石井 武志
http://www.shirakabe.co.jp