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製造業が抱える5つの難問をTPiCSで解く

10/03/29 更新

 

 

はじめに

 

「難問をTPiCSで解く」とお聞きになって、「たかが100万円、200万円のシステムでそんなことが出来るのか?」とお考えになっても不思議はありません。勿論 TPiCS-Xを買って頂いただけで「難問」を解決出来る訳ではなく、我々が提唱する生産管理の考え方をご理解頂き、それを実践して頂くことが必要です。

我々は絵空事を言っている訳ではありません。我々は生産管理の問題に対する「確かな答え」を持っています。その道は決して簡単な道ではありません。しかし真の解決に確実に繋がっている道です。

我々の考える「答え」をご理解頂き、是非「問題の解決」に向け、一歩を踏み出して頂きたいと思います。

 

20082月 

株式会社ティーピクス研究所

代表取締役 二ノ宮良夫

 

 

最近は「データを自由に修正出来る」面だけを書くと「内部統制」の観点から思わぬ評価をされてしまうことがあるので、TPiCS-Xにも「権限管理」や「データの修正ログ管理」などの機能があることを始めに申し上げますが、本文では全て省略して説明させて頂きます。


 

目 次

 

1. 5つの難問とは

(1)                     短納期生産、変化に対応できる生産を実現する

(2)                     現場の見える化を図る

(3)                     遅れの問題を解決する

(4)                     在庫縮小と短納期生産を両立させる

(5)                     新製品の垂直立ち上げ、設計変更に対応する

2. 繰返し生産編

(1)                     TPiCS-Xで、短納期生産、変化に対応できる生産を実現する

(2)                     TPiCS-Xで、現場の見える化を図る

(3)                     TPiCS-Xで、遅れの問題を解決する

(4)                     TPiCS-Xで、在庫縮小と短納期生産を両立させる

(5)                     TPiCS-Xで、新製品の垂直立ち上げ、設計変更に対応する

3. 個別生産編

(1)                     TPiCS-Xで、短納期生産、変化に対応できる生産を実現する

TPiCS-Xで、新製品の垂直立ち上げ、設計変更に対応する

(2)                     TPiCS-Xで、現場の見える化を図る

(3)                     TPiCS-Xで、遅れの問題を解決する

(4)                     TPiCS-Xで、在庫縮小と短納期生産を両立させる

4. 手前2週間を仮固定しながら生産計画を作る方法

5. サプライヤーとの情報共有(戦略型納期調整オプション)

6. 現場指示と平準化(着手信号機オプション)

7. Sと生産管理について



1.5つの難問とは

一口に製造業と言っても、会社毎に作っているものが異なり、商品の性質やマーケットの性質が異なります。また経営者の考え方や、社員の持つスキルも異なります。さらにその工場が歩んできた歴史が異なる訳ですから、自ずと「ものの作り方」即ち「生産管理方法」が異なります。

しかし、見方を変えると、「ものを作る」為には、図面や配合法、或いはレシピーなど狭義の生産方法があり、設備があり、資材を手配し、加工をする。これはどんな製造業であっても同じです。

これは「人間」に例えるとよく分かります。人間一人一人は皆異なりますが、頭があって、手足があって・・・、と考えれば、皆同じです。そして「病」も同じように考えることが出来ます。食べ過ぎれば胃を壊すし、酒を飲み過ぎれば肝臓を悪くします。すると、製造業も、顧客ニーズに敏感に対応できるようでなければチャンスを逃す。在庫で対応しようとすれば、どうしても不良在庫が増えてしまう・・・この問題は皆共通です。

しかし、本当に難しいのはここからです。

たばこを吸い続けて90才まで生きる人もいるし、吸わなくても40才で肺ガンを患い亡くなる人もいます。

在庫も、商品バリエーションが少なく、また商品のライフサイクルが長く設計変更も少なければ、在庫を多く抱えて生産する方法も一つの答えです。

こう考えると、話が振出しに戻ってしまいます。しかし、たばこは確実に体には悪い(そうです)し、在庫も少なくて済むなら少ない方が良に決まっています。個別の問題の中に一般的な問題を見いだし、一般的な答えの中から個別の答えを作り出していく、この両方の面が必要になります。

 

では、そもそも製造業の方は何に困っているか。勿論沢山の悩みをお持ちの筈ですが、その中で生産管理システムを使って解決し易い問題、或いは

生産管理だけでは解決出来なくても生産管理により改善出来る問題をピックアップします。

そしてその問題を出来るだけ一般化し、背景にある問題の仕組みを浮かび上がらせ、具体的な答えに繋げるようにしたいと思います。

というようなことを考え、難問を5つピックアップしました。


(1)短納期生産、変化に対応できる生産を実現する

バブル崩壊以降、商品が多様化し、そのライフサイクルは短くなりました。また、IT化により社会全体の仕事のスピードが速くなり、需要に対し出来るだけ速く供給しなくてはならなくなりました。

例えば、昔なら受注後2ヶ月或いは3ヶ月後の納品が当たり前でしたが、今はそんなには待ってくれません。

それを在庫で対応しようとすると膨大な在庫金額になってしまうし、短納期で生産しようとしても部品や材料が間に合わない。

あるいは、既に取引先から短納期の発注が実施され、さしたる方法論もないまま「やるっきゃない」と言って、がむしゃらにやっている。そんな状況を「問題」とし、それを解決する方法を説いていきます。

(2)現場の見える化を図る

「管理」の基本は「誰が見てもすぐわかるような状態にする」です。次に「見える化」の本質は、「見える」ことを活用して、改善をしたり、トラブル発生を防ぐことです。TPiCS-Xを使ってそれを実現する方法を説いていきます。

(3)遅れの問題を解決する

今でも途上国では半分笑い話の様に「1日〜2日は当たり前・・・」などと言われますが、勿論そんな訳にはいきません。遅れの問題を解決するための方法を説いていきます。

(4)在庫縮小と短納期生産を両立させる

「在庫」という観点から問題を考えます。ある意味で「在庫縮小と短納期生産」は相反する問題です。生産管理の問題を考えると、「あちらを立てるとこちらが立たず」の問題がとても多いです。

ここに挙げた上記4つの問題は、根っこのところで皆一つに繋がっています。そんな観点で、この2つの問題を両立しながら解決する方法を説いていきます。

(5)新製品の垂直立ち上げ、設計変更に対応する

商品のライフサイクルが短くなり、新商品の開発期間の短縮を求められます。それと同時に生産面も1日でも早くフル生産出来ることが求められます。この問題は、上記4つの問題と少し性質が異なり、「道具」に依存する面が強くなりますが、その解決方法を説いていきます。


2.繰返し生産編

(1)TPiCS-Xで短納期生産、変化に対応できる生産を実現する

短納期生産とは

最終消費者が、商品を買ってくれるか、買ってくれないか、何時、何を、幾つ買ってくれるかは、誰にも分かりません。全ての企業活動、全ての生産は最終消費者(=人間)の動向に左右されます。最終消費者との距離が遠いと(例えば研究開発など)この繋がりが見えにくくなりますが、世の中に受け入れられる可能性が無いものは研究も開発もしないはずです。予測の難しい人間の行動原理を何とか予測し、その精度向上を目指すという方向も答えの一つですが、それと異なる答えとして、需要の推移に出来るだけ近い時点で生産へ反映することも重要です。

バブル崩壊前の高度成長期は、「予測精度向上」の方が「需要変動に追随」に比べ重要視されてきましたが、「予測」というものの限界を知り、最近はもっぱら需要変動に追随する道が指向されているように思います。

しかし「需要変動に追随する」ではテーマが広すぎるので、TPiCSの中では「短納期生産」と名付け、この問題を扱います。

例えば

@お客様から頂いた注文に、1日も早く出荷できる体制を、出来るだけ少ない在庫で実現したい。

A販売計画などマーケットの予測が難しく、毎日の受注状況に振り回されながら生産しているが、それをなんとか改善したい。

B得意先から内示情報を頂くが、間近な確定注文で大きく変わってしまい、常に混乱した状態を余儀なくされている。

C得意先から納期短縮の要請を受けている。

D特急、飛び込みに、もっとスムースに対応出来るようにしたい。

このような問題を解決するのが「短納期生産」で、根性や頑張りの体力勝負で対応するのではなく、頭脳勝負で対応出来るように、また出来るだけ少ない在庫で実現できるようにすることを、我々は「短納期生産」と呼びます。

 

■短納期生産に対する誤解

短納期生産に関しては、多くの方が重大な誤解をしていて、「ニーズは分かるのだけど、なかなか前へ進めない」状況なのではないかと思います。

@「今でさえ生産遅れがあって困っているのにこれ以上短納期で生産しろと言われたってウチでは無理だ」これが短納期生産に関する典型的な誤解です。では、この問題を生産遅れの原因を分類しながら少し詳しく考えてみましょう。

設備等の能力不足が主原因の場合、

一番分かり易い話から始めます。例えば 設備能力が900個/日で、1,000個/日生産しようとして遅れているとします。その1,000個が、2ヶ月前に決まった1,000個でも、3日前に決まった1,000個でも、生産できる数量900個は変わりませんから、この原因による生産遅れは短納期生産や納期短縮とは全く関係ないことが分ります。

部品の納入遅れが原因の場合、

これはTPiCS-Xの機能の中に答えがあります。

TPiCS-Xf-MRPの基本の考え方は、「部品や材料は必要なタイミングで発注する」です。短納期生産をしても3ヶ月前に発注せざるを得ない部品は3ヶ月前に発注します。(詳しくは後述)

短納期生産を考える場合は、“生産が決まってから必要な部品を手配する”ではなく、“既に手配されている中で生産出来るか否かシミュレーションする”と考えます。勿論、生産が決まってからでも間に合うものは、決まってから手配すれば良いのですから、調達期間の短いものが多いとシミュレーションの結果「出来る」可能性は高まります。更にその可能性を上げる為には、調達期間が長い部品には「生産の変動に対する備え(バッファ)」を設け、その設定値を大きくします。

既に手配されている部品や材料の中で短納期生産を実施する場合、「バッファ」の機能が無く、かつ強引にそれを実施すると、サプライヤーさんの生産を“かき回す”ことになり、結果として部品や材料の納入遅れに繋がります。

しかし、必要なバッファを設定すれば、TPiCS-Xはそれを有効に活用出来るため、短納期生産をしても部品の遅れが増えることはありません。

不良が主原因の場合も、

我々は「無理に急いで作って短納期生産を実現する」と考えている訳ではありません。部品や材料の発注と同じように、3日間必要な工程は3日間掛けて生産するしかありません。ですから短納期生産をしても不良が増える訳ではありません。

Aしかし、最も短納期生産を阻んでいるのは「今でさえこんなに忙しいのに、これ以上短納期で生産しろと言われたって出来ない」という思いかもしれません。

これは現場の話と、事務所の話に分けて考えます。

現場の話は、@の誤解と同じように考えて頂ければ分かります。つまり3日前に決まった1,000個も2ヶ月前に決まった1,000個も、作業量は一緒ですから、現場の忙しさは短納期生産をしても変わりありません。

事務処理はさすがにそうもいきません。生産数量と比例して発生する事務処理は、同じ1,000個であれば短納期生産でも増えませんが、「今日中にやらなければならない仕事」が増え、その「切迫感」が「忙しくなった」と感じさせるかも知れません。しかし、TPiCS-Xは「短納期生産の専用機」のようなものなので、TPiCS-Xを使って頂ければ簡単に実現することが出来ます。

B平準化の問題も短納期生産を阻みます。

これも分かり易いように極端なケースを例に考えます。当日受注、当日生産のケースです。この場合、受注数がダイレクトに生産数に反映されてしまいます。


即ち、受注のボリューム変動がそのまま生産ボリュームの変動になってしまう為、平準化が難しくなります。

 

平準化については、次の問題も考慮する必要があります。

週の単位で平準化したいと考えたとすると、最低限、金曜日には来週1週間の計画が決まっていないと平準化の調整作業そのものが出来ません。また、中間工程あるいは先頭工程を考えると、来週末は再来週の仕事をしている筈ですから、再来週の先頭日の計画も決まっている必要があります。

手前2週間は計画を決めなければならい=お客様のニーズを反映できない

と考えてしまいます。

 

C最後の誤解は、「着手から完成までの工期が長く、これ以上工期短縮は出来ない」場合です。

このケースは、「誤解」とまでは言えないかもしれませんが、TPiCS-Xをご存じなければギブアップしてしまう、或いは答えに行き着かない道を選んでしまいます。

品質管理上の問題等の理由で、着手したら工場内で止めておく(=在庫しておく)ことが出来ない物を生産する場合は、逃げ道はありませんが、それが可能なら、この問題も解決することが出来ます。

 

ましてや、工程の途中から加工方法により異なる製品になる、或いは組み付ける部品により異なる製品になるような場合は、大きな効果を上げることが出来ます。

 

「どうせシステム屋が調子の良いことを言っているだけ」と思いながらこの資料をパラパラめくっても何も生まれません。

是非「ウチでも短納期生産が出来るかも知れない」と思いながら、真剣にこの文章を読んで頂きたいと思います。

 

■短納期生産、変化に対応できる生産の実現

この問題を考えるためには先ず始めに、短納期生産を実現するためには何をしなければならないか、を考えます。その為に「生産には何が必要か」をおさらいしましょう。生産管理の教科書を開くと(40年近く前なので実はスッカリ忘れていますが)第一章には必ず「生産の5大要素」が書かれています。

@設備、場所 A人 B部品、材料 C図面、仕様 D資金 たしか教科書に書かれているのはこの程度だったと思いますが、これにE外注、協力会社を加えても良さそうな気がします。それはともかく、生産を行う為にはこの5大要素が揃う必要があります。この中で、短納期生産と大きく関係するのはBです。では、部品や材料の調達に焦点を当て、話を進めていきましょう。

「短納期生産」と「従来の3ヶ月先、4ヶ月先の生産」を比べ、部品や材料の調達の面で何が違うかを考えます。すると従来は「生産計画を決めてから手配をする」逆に言うと「手配が間に合うような時点で生産する」としていました。「生産」を考えると、どんなに沢山の部品を使っていても、またどんなに簡単な部品でも、一つでも不足していれば完成出来ないのですから、使用する部品や材料の中で入手するのに一番時間が掛かるものに合わせなければなりません。それが「3ヶ月先、4ヶ月先の生産へ反映」になった訳です。

部品や材料の調達期間を考えるとき、忘れてならないのがパワーバランスです。普通はサプライヤーの生産の都合や考え方で調達期間が決まりますが、発注する側が圧倒的な購買力(沢山購入する力、技術力、指導力等)を持っていれば、サプライヤー側の都合を無視して、発注後3日先とか4日先に納品させることが出来ます。

ここでの考察は、このような「大企業等の特殊な状況」ではなく、一般的な製造業を中心に考えていきましょう。

部品や材料を希望通り(計画通り)に調達する為には、その部品を入手出来るタイミング(発注リード日数)で発注しなければなりません。

しかし、先行き遠いタイミングでの発注をすると、短納期生産の中では「最終的に何を作るか」が決まる前に発注することになります。

これは、短納期生産を行うためには、既に手配されている部品や材料の中で「何を作るか」を考える、つまり手配状況をベースに生産計画を考えなければならないことを意味します。

勿論、調達期間は部品や材料によって異なります。実際には発注先により同一になることも多いかも知れませんが、本質的には部品や材料によって決まります。

その上で生産計画を考えるとき、部品や材料毎に「今から発注して間に合うもの」と「もう間に合わないもの」とに分けて考えなくてはなりません。

TPiCS-Xの所要量計算では、部品や材料毎に、既に発注されている期間と、これから発注すれば間に合う期間を明確に分けて計算しますが、一般的な生産管理システムは「製品の計画ありき」で、その実施のために必要な部品を発注する、という考え方で作られています。その為、この時点でもう、一般的な生産管理システムでは短納期生産に対応することが難しいことが分かります。

ここで、「既に発注している分」や「既に生産指示をしている分」も「計画」と考えることが出来るので、これらを「手配済みの計画」と呼ぶことにします。

「長い調達期間の部品」と短納期生産の関係を考えると、設備が生産計画に与える問題と似ていることが分かってきます。一般的には設備を作る為にはある程度の期間が必要で、今日明日の問題ではありません。すると、「既に決まっている設備能力の中で生産計画を考える」ことになります。しかし、部品や材料の発注は設備能力と少し違うところがあります。部品や材料の発注は、ある程度「無理が通れば道理が引っ込む」面があり、設備と比べると多少融通が利きます。融通が利くという面では、むしろ人員の問題と似ているかも知れません。

 

■シミュレーションという考え方

多かれ少なかれ、何を幾つ生産するかが決まる前に部品や材料を発注しなければならないものが有るなら、それらの「手配済み計画」を考慮しながら生産計画を考えなくてはなりません。

部品が不足する、しない、間に合う、間に合わないを考えながら生産計画を作る、通常それをシミュレーションと呼びます。そうです、TPiCS-Xの所要量計算はシミュレーションという考え方が非常に強いのです。

それに対し一般的な生産管理システムは「必要数を算出し、伝票を発行する」という一方通行の考え方にとどまります。必要数に在庫の引当てやロット纏めを行い、部品や材料の発注或いは生産指示をして「後は頑張って実施してください」です。その通り出来るか否かは、システムは知らんプリです。私はそれを「垂れ流しの生産管理」と呼んでいます。発注した計画を一般的には「オーダーリリースした計画」と呼び、オーダーリリースした計画は次の所要量計算ではもう計算の対象にはしません。あるいは所要量計算の対象とする期間と、対象にしない期間、つまりシステムでは計画の変更に対応しない期間を分け「タイムフェンス」と称する概念で区切ってしまいます。「システムとしてはリリースしたのだから、もう計算の対象にしません」と言われると、一見尤もだと思ってしまいます。或いはこれまでは、それを「当たり前のこと」と思っていたかも知れません。しかし、短納期生産を直近まで実施しなくてはならなくなり、タイムフェンスの中まで入り込むようになると、それでは困ります。

直近の計画であっても、システムできちんと計算して、出来る出来ないの見通しを付けながら計画をメンテナンスし、全ての生産活動がその生産計画を中心に動いていく。

これが我々の考える短納期生産です。

■チョット難しい話

しかし、これを実現する為には一つハードルがあります。システムで計算するとき、システムは何を基に計算するかを考えると、登録されているマスターを使って計算します。また在庫の情報も使います。次に忘れてならないのが、手配済み、確定済みの計画データです。

では、手配済み計画データの中に、“納入されるあてがないもの”が混ざっていたとするとどうなるでしょう。

システムは“あてがある”か“否か”は分かりませんから、それらの計画データも使い、とにかく手配済み計画に従って納入される前提で計算します。すると、その部品を使用する製品の計画が新たに入ってきても、現在の計画で充足すると計算してしまいます。しかし、その部品は納入されないのですから、生産出来ません。つまり、本当は生産出来ないのに、システムから警告情報が出せないことになってしまいます。

所要量計算で正しいシミュレーション結果を出すためには、

@ システムに登録するマスター

A システム内の在庫数量

B システムに記録されている計画そのもの

を正しくしておく必要があります。

しかし、一般的に@とAは話題になりますが、Bはあまり話題になりません。それがなぜかを考えます。

以前は、MRP計算は月に一度しか行わないというのが一般的な運用方法でした。例えば毎月1日にMRP計算をするケースで説明すると、次にMRP計算をするのは来月の1日です。例えばN1日に所要量計算すると、次の所要量計算はN+11日です。N+11日になると、N月の1日から31日までの全ての日は過去日ですから、当然再計算の対象になり得ません。その結果、MRPシステムに入力する計画は「マスタープラン」とか「基準日程計画」と呼び、「部品や材料を手配するための計画」と位置づけられ、日々の本当に生産しようとする計画を「実行計画」と呼び、「二つは当然異なるもの」と考えるようになりました。そして「実行計画でマスタープランを修正する」という考え方は、必要性も、またシステムにその機能も有りませんでした。

一般的なシステムは、今でもその考え方の延長で設計されているため、オーダーリリースした計画は再計算の対象にしません。そして再計算しない(出来ない)区間を「タイムフェンス」と呼び、次のように説明します。「今日、明日、直近の計画を変えろといわれても変えられないでしょ。それを無理やりやらされていたから今まで困っていたのでしょ。弊社のシステムは、タイムフェンスで守ってあげますから、従来のような混乱を解消します」と。しかし、明日でもあさってでも、計画を変えなければならない事態は発生します。そもそも「マスタープラン」と「実行計画」は異なる前提なのに、「マスタープランをタイムフェンスで守ってあげます」といわれても何も嬉しくないはずなのですが・・・。

 

では、システムを使っていて「マスタープラン」と「実行計画」が異なると何が起きるかを考えます。

(A)    マスタープランから計算された注文書通りに部品や材料が納品されていても、今日明日の実行計画で部品に不足があるか否か分からない。生産管理システムを使っていても、毎日残業をして明日の生産、あさっての生産に必要な部品が本当に足りているかを電卓を使って検算することが必要になる。

(B)    システムの生産計画表を見ても、今日、明日、何を生産し、何が出来るのか分からない。

(C)    直近の計画変更をシステムが処理してくれないので、直近で追加生産する場合は、「例外処理」で対応しなければならない。

しかし、TPiCS-X流の「タイムフェンスが無い=オーダーリリース分も完了するまでは常に再計算の対象にする」ロジックも、全く“ノー天気”なものではありません。オーダーリリースした計画も実態と乖離してはいけない。システムの中の計画データを常に実行計画、実施出来る計画に合わせなければならないという縛りがあります。

これはこの分野の実務をなさっている方なら、それを実現する難しさも、またことの重要性も、分かって頂けると思います。

これは社内のことなら頑張ればなんとかなるかも知れませんが、社外のサプライヤーさんの情報となると、なかなか入手出来ません。私は弊社で開催している研修会の中で、いつも次のように話しています。

「私は20数年前、ある製造業の中で生産管理の仕事をしていました。その頃、もし私がTPiCSの研修会に参加し“TPiCSを巧く使うためには部品や材料のレベルまで、常に実施できる計画にメンテナンスしなければなりません”と言われたら、社に帰り、報告書を書くとき“TPiCS-Xは当社で使うのは無理です”と書いたと思います」

説明はもう少し続きます。「しかし、2年ほど前、この話をお聞きになった方が“確かに計画もメンテナンスしなければ本質的な問題解決にならない”と思い、TPiCS-Xを購入し、計画をきちんとメンテナンスする運用を実践なさいました。その結果とても大きな効果を得ることが出来たそうです」とお話します。

例えば、

                得意先から納期の繰り上げ要請や追加発注などがあると、対応可否の答えを出すのに、従来は2週間ほど掛かっていたが、TPiCS-Xを導入してからは1日で出せるようになった。

                計画をこまめにメンテナンスしているので、TPiCS-Xの画面を見ると誰でも“いつ何が完成するか”あるいは“今自分は何をするべきか”が分かるようになった。

                お客様への納期遅延が減った。

                売り上げが前年比1.5倍になった。

などという効果があったとお聞きしています。

売上げが1.5倍になったことまで全てTPiCS-Xの導入効果だとは思いませんが、でも嬉しい話しです。

大変な様でも「やれば出来る」「やれば本当に効果がある」ということを、証明して頂いたようなものです。

 

■計画管理

しかし、短納期生産を実現するためには、TPiCS-Xユーザーにやって頂かなくてはならない大事なことが二つあります。

@          システムの計画データを実行計画に沿って常にメンテナンスする。

上記したように、TPiCS-Xの所要量計算(シミュレーション)を正しく意味あるものにするためには、計画データを全てメンテナンスすることが必要です。

A          システムの計画を守って生産する。

言うまでもありませんが「計画を守る」という姿勢が無ければ、何も始まりません。計画を守ってこそ整合性の取れた生産が出来、短納期生産が実現できます。

このような考え方や運用方法を我々は「計画管理」と呼んでいます。

 

誤解があるといけません。

一般的な生産管理システムと同程度の運用レベルでよければ、TPiCS-Xを使って頂いても「計画管理」をする必要はありません。

                システムの画面を見ると、今現場で行われている仕事と異なるものが表示されている。

                新規の注文が入った時、生産できるか否か電卓を叩かないと分からない。

                直近の計画変更はシステムが対応していないため、頻繁に特別処理で追加発注しなければならない。

                あるいは、それを見越して発注担当者が割り増しして発注している。

                部品が注文書通りに納品されていても、今日、明日の生産が賄えるか否か分からないので、いつも在庫を数え、電卓を叩いて確認しなければならない。

                これらを考えると、どうしても在庫を多めに抱えてしまう。

このような状況のままでよければ、TPiCS-Xを使って頂いても「計画管理」をする必要はありません。

 

■社外のサプライヤーさんの情報について

社内の実行計画をシステムに反映するのは、頑張ればなんとか出来ますが、購入品の場合、社外のサプライヤーさんから的確な情報を入手するのは非常に難しいです。

しかし、難しくしている原因の大半は発注側にあるのではないでしょうか。

私が製造業にいた時は、部署が違ったので実際にその立場になったことはありませんが、もしサプライヤーさんから“納入が遅れそうです”という連絡を受けたらどうしたかを考えてみます。

その当時のシステムは、サプライヤーさんから “延伸願い”が来た時、その情報をシステムに入力する機能はありませんでした。すると、システムで動いているところを、全てシステム外の処理でカバーしなければなりません。20年前の汎用機のシステムですから、手作業が混在した(ある面手作業の方が優先した)運用なので、むしろ対処しやすかった筈ですが、それにしても面倒な仕事です。みんなに喜ばれる仕事ではありませんから、そんなことを工場の中でショッチュウやると、私の成績も悪くなってしまいます。

その頃の部品発注は、3ヶ月後、4ヶ月後の納期の発注をしていました。

そこで、私が延伸の連絡を受けたなら、次のように対応したと思います。

サプライヤーさんが注文書を受けて直ぐに電話をして来たら「まだ納期まで時間があるのだから何とかしろ!」

逆に納期間近に電話をして来たら「今まで何やっていたんだ!」と言って受話器をガチャンと置くでしょう。

サプライヤーさんもガチャンと受話器を置かれるだけと思えば、余程のことがない限り「遅れそうです」とは言って来ません。

延伸願いが無く、また本当に納入遅れの無いことが一番良いのですが、実際には納入遅れはそう簡単には無くなりません。ドタキャンされて困るのはこちらです。前広に情報を得て、的確な手を打たなくてはなりません。納入遅れが先に分かっていれば打つ手も考えられますが、当日になってから「ごめんなさい」と言われては困ります。

この問題を少しでも解決するために開発したのが、戦略型納期調整オプションです。(戦略型納期調整オプションについては5章「サプライヤーさんとの情報共有」をご覧下さい)

 

■なぜ短納期生産が出来ないか

「なぜウチではこれ以上短納期生産が出来ないか」を、ここでもう一度考えてみて下さい。

                これまで何度か「生産管理システム」を検討してきたが、ウチの仕事には合わないと思って採用してこなかった。

                生産管理を、手作業あるいはExcelなどで行っていて、仕事が間に合わない。

このようなケースもあるかもしれません。

あるいは、既に生産管理システムを使っているが

@「タイムフェンスがあるシステム」を使っていて、システムの計画を実行計画に合わせられない。

A生産管理システムを使っていても、納入されている部品で今日あるいは明日の生産が、賄えるか否か、分からない。

B資材担当が、電卓を叩いて確認しなければならない。

C確認作業は、部品の不足があった時、今日や明日のことを騒いでも間に合わないので、手前数週間の部品の生産状況や納入状況を、チェックしている。

D納入状況をチェックするのは大変だから、一度チェックした期間は計画を変えたくない。またその間は、もし部品が不足しても、どの道間に合わない。

Eだからこれ以上の短納期生産はできない。

ではないでしょうか?

どうでしょう、ここまで問題点をクリアーにすれば、そして具体的な解決策があれば、ウチでも短納期生産が出来るかもしれない、と思っていただけたのではないでしょうか?

 

■平準化の問題

短納期生産を考えていくと必ず平準化の問題にぶつかります。

「本日受注し、本日生産し、本日出荷する」あるいは「本日3日後出荷の注文を受ける」ような生産の仕組みを考えると、生産ボリュームが受注ボリュームにリンクしてきます。受注ボリュームが平準化されていれば良いですが、平準化されていなければ、生産ボリュームは受注ボリュームに従って波をうってしまいます。

また、生産計画が決まってないと平準化作業そのものが出来ないため、平準化したい期間は、計画を先に決める必要があります。

 

「平準化はしたいし短納期生産もしたい」この相反する問題を、TPiCS-Xは次の2つの方法で解決します。

@「固定期間」というパラメータを使って「手前2週間を仮固定しながら生産計画を作る」機能

必要期間(例えば、手前2週間)の計画は、所要量計算上はフィックスするが、まだ伝票などは発行しない状態(生産計画を仮固定した状態)にします。毎日受注データを登録し毎日所要量計算をします。仮固定した計画で、過不足が無ければ(設定した許容範囲の中なら)その計画のまま実行します。もし過不足が有る場合は、それをシステムが教えてくれるのでその時は生産計画を修正します。

TPiCS-Xの所要量計算には、フィックスした(独立需要と呼ばれるものに似ている)計画と、計算に従い算出される(従属需要に似ている)計画があります。一般的な生産管理システムでは、独立需要と呼ばれる計画は最終製品にだけしか適用出来ませんが、TPiCS-Xの場合は、どの工程でも、末端の材料部品でも、フィックスして計算することが出来ます。更に、手前何日間フィックスするかを指定することが来ます。この機能を使って平準化の問題を解決します。

A着手信号機オプション

平準化の原点は、現場の人が作業伝票に従って仕事をしようとするとき「今日は山ほど仕事があるが、明日は半日分の仕事しかない」ような状態だと困る、です。この原点に立ち返って問題を考えると、現場の人が「今日どこまでやれば帰ってよいか」が分かりさえすれば良い、と考えることが出来ます。

着手信号機オプションは、現場の人が「今、自分は何をするのが良いのか」を判断できるようにする為のものですが、同時に「どこまでやればよいか」も知ることが出来ます。生産計画そのものには多少の凸凹があっても、例えば月曜から金曜日までの平準化を考えて、今日はどの作業までやればよいか、あるいは、明日の作業もやらなくてはならないのかを、現場の端末に明示することが出来ます。

(それぞれ、4章「手前2週間を仮固定しながら生産計画を作る方法」、6章「現場指示と平準化」をご覧下さい)

 

■着手から完成までの工期が長い場合

例えば着手から完成まで10工程有り、完成するまでに10日間必要な場合でも、工程間に在庫ポイントを設けることが出来るなら、TPiCS-Xは工程内のアイテムにも基準在庫を設定し、それを引当てながら所要量計算できるので、今日の受注を明日の完成計画に反映することが出来ます。

また、共通の材料を加工し、共通の仕掛かりを作り、途中工程から加工方法により、複数の製品になるような場合、中間工程も共通部品のように扱うことが出来るので、それも引当てながら所要量計算することが出来ます。

TPiCS-Xのこの使い方は、システムとしては極自然な動きであるため、むしろ詳しい説明がしにくい程ですが、お客様からみるとなかなか理解して頂きにくいものの様です。とても重要かつ有効なものであります。

 

■実績について

一般的には「MRPが正しく計算される為には、実績を正しく入力しなければなりません」と、言われます。システムに入力するデータは全て正しくなければならないのは、TPiCS-Xでも同じですが、正しい所要量計算結果(シミュレーション結果)を得るためだけを考えると、TPiCS-Xは実績入力より計画管理(計画を正しくメンテナンスする)の方が重要です。なぜなら、「■チョット難しい話」で書いたようにTPiCS-Xの所要量計算は、未完の計画については計画をベースに計算するので、特殊なケース(大量に不良が発生した等)でなければ、実績を登録しなくてもある程度の精度で所要量計算することが出来るからです。

それに対し、サプライヤーさんから「遅れます」と連絡を受けていても、システムにその情報を反映しなければ、正しく計算できません。

 

 

(2)TPiCS-Xで現場の見える化を図る

●もし「計画管理」が巧く出来たとすると、どうなるかを考えてみて下さい。システムに入っている計画のデータが全て生きていて、その計画通りに現場が動き、またサプライヤーさんも計画通りに納品して来ます。

すると、システムの画面を見るだけで、各現場で今何をしているのか、明日は何が出来るのかが、全て分かることになります。つまり、現場に行かなくてもパソコンの画面を見るだけで、現場の状況が分かるようになります。これこそ「見える化」です。

●もっとも「見える化の本質」は、ただ見えればよい訳ではなく、見えるようにして、そして何をするか、です。

その結果を改善活動に繋げるとか、工場の安全管理の「ヒヤリ・ハット」活動の様に、小さなシグナル(予兆)を見て、大きなトラブルが起きないように事前に施策を講じる、です。

●画面にデータを表示するだけのシステムであれば、チョット器用なプログラマーなら簡単に作れます。

しかし、画面に常に生きたデータを表示させるのは大変です。

そして、そのデータを本当に活用するのは更に大変です。

「システムに魂を入れる」とでも言うのでしょうか。

●一方 実績面では、見える化のツールとして「TPiCS-X生産管理ダッシュボード」を提供しています。これは、TPiCS-Xのデータをもとに、管理資料や分析資料を作成するものです。TPiCS-Xから、進捗状況、在庫金額変化状況、在庫回転日数、生産実績(金額)、作業能率達成率、購買コストダウン達成率、受注・手配金額、歩留まり、マスター分析、不使用在庫のデータを集計、表示します。

生産管理ダッシュボードは様々な切り口による実績の分析が可能です。例えば進捗状況の円グラフをクリックすると、内訳の分析グラフに表示が切り替わります。進捗状況の分析で最もネックになるのが部材や前工程の遅れによる影響の配慮です。このダッシュボードでは前工程の遅れを差し引いた分析や、当初納期からの繰り上げ計画に対する追従状況の分析なども可能です。在庫分析もアイテム毎の在庫金額や在庫日数による分析、さらに最後に発注した日や発注承認者まで掘り下げることが出来ます。

(生産管理ダッシュボードは、TPiCS-X Ver3.2をお使いで、TPiCS-Xご購入時に無償添付されるStiLL-X (Ver1.00.019以降)をお持ちのユーザーは無料で使用することが出来ます。)

(3)TPiCS-Xで遅れの問題を解決する

長く生産管理の仕事をしている方なら、今でも記憶にあると思います「日本坂トンネルの火災事故」、最近では「中越沖地震のピストンリング」など、突発的な事故や災害による生産遅れ、部品の納入遅れは、何をヤッテも防ぐことは出来ません。むしろこれは「リスク管理」というような考え方で対応するべき問題かと思います。

一方、日常の中で発生する遅れは「トラブルを早く予見し、早く対策をする」以外に解決の道はありません。

日常発生する遅れには、外部要因による遅れと、内部要因による遅れがありますが、いずれにしても巧く取り組まなければ、出荷遅れを引き起こしてしまい、顧客に迷惑をかけてしまうことは明らかです。

もし遅れの要因が生産管理業務寄りのものであれば、TPiCS-Xで多くを解決することが出来ます。

@          外部要因による遅れ

 サプライヤーさんの遅れを無くすためには、はじめに発注する側が作っている遅れの原因(無理な注文)を無くして、納期を守れるような発注を行うことが必要です。

 TPiCS-Xでは、「■短納期生産に対する誤解」で書いたように「部品や材料は必要なタイミングで発注する」こと、「生産の変動に対する備え(バッファ)」の機能を利用することで、サプライヤーさんの生産を“かき回す”ことのない発注を行うことが出来ます。

また、TPiCS-Xの「予定・遅れリスト」は遅れを予防するという意味で重要な役割を果たします。例えば、毎週金曜日に、納入予定日が来週に迫った注残を、ボタン一つで全てのサプライヤーさんにメール送信したり、印刷したりして予定を確認してもらいます。その時、もし既に遅れているものがあれば、当然「遅れ分」としてリストに掲載されます。

しかしながら、どんなにこれらを心がけ、実行したとしても、遅れが無くなることはないでしょう。そして遅れがあるとするならば、計画管理という観点で説明したように、納期延伸の連絡など、常に生きた情報を得られる様にして、出来るだけ早くリスクを予見します。

サプライヤーさんから納期延伸の連絡があった時は、まずその遅れが現在の計画に影響を及ぼすか否か、何をどれだけ調整しなければならないかを知らなければなりません。製品の計画を後の日にずらす場合には、その日の生産量を下げたくありませんから、代わりに生産できるものを探します。何を作れるのか、いくつまでなら部品があるのか、TPiCS-Xを使えば、それらについてシステムの中でシミュレーションしながら答えを見つけることが出来ます。これにより、遅れが発生したとしても、その影響を最小限に止めることが出来るのです。

念のため説明しますが、もちろんむやみに納期延伸の連絡を受け入れて良いわけではありません。「計画を守る」こと(サプライヤーさんに納期を守らせる体制作り)は、生産管理を行う上でとても大切なことです。

とはいえ、本当に出来ないものは仕方ありませんから、出来るものの中から現実解としての生産計画を考えていきます。

 

A          内部要因による遅れ

(A)     能力以上の受注見過ごしによる遅れ

(B)     計画反映漏れ、手配ミスによる遅れ

(C)     現場への指示不徹底による遅れ

(D)    設計ミスによる遅れ

(E)     設備、治具、型のトラブルによる遅れ

(F)      出勤率低下による遅れ

(G)    その他

原因となることを幾つか挙げると、所謂「システムで管理する」だけで解決するものと、解決しないものがあります。(A)(B)(C)に関しては、システム化により防止できるものです。

また、もし遅れが発生した場合も、外部要因による遅れと同じように実行可能な挽回計画を素早くたてることにより、影響を最小限に止めることが出来ます。

但し、もしシステムのデータがデタラメなら、ここでもそれは役に立たないことになります。

 

 

(4)TPiCS-Xで在庫縮小と短納期生産を両立させる

「在庫は全ての生産活動の結末」といわれるように、在庫に影響を与える要因は多数あります。しかし、いくらその要因が多いからといって原因を分析せずに答えは出せませんから、先ずは在庫の発生原因を分類し、その上で在庫縮小を考えます。

まず、

@見込み違いや手配ミス、あるいは設計変更などによる「不良在庫」

A日々の生産活動の中で自然発生する「運用在庫」

B変化に備える自衛の為の在庫

に分けます。

●「不良在庫」を減らすためには「予測精度を向上する」あるいは「手配ミスを撲滅する」ことが必要です。その対策として「多次元解析のシステムを使って計算する」や「確認作業や重要な事柄に関してはダブルチェックを実施する」等が考えられますが、それらの対策をどんなに熱心にやっても、未来を100%予測することは出来ないし、ミスを全く無くすことも出来ないでしょう。

世界がグローバル化され、マーケットを動かす要因は増えることはあっても減ることはありません。

また、要求される品質基準や、安全基準は、今後上がることはあっても下がることは無いはずです。その為の設計変更は今後益々増えるでしょうし、またコストダウンの為の設計変更もこれからも続くことでしょう。

これらのミスや予測違い等“あって欲しくないこと”が決して無くならないのなら、“あって欲しくないこと”が発生したときの被害を最小限に止めるようにするのも重要な答えです。またそれこそが生産管理の真価が問われるところです。

そして、これを実現するためにはスピーディーなものづくりを行うことが必要です。部品材料の調達期間を短縮し、調達ロットサイズを小さくすれば、部品や材料の不良在庫を少なくすることが出来ます。製品生産も同様に製造期間の短縮やロットサイズの圧縮により製品の不良在庫を少なく出来ます。何かの問題が発生した時、3ヶ月先まで発注していれば3ヶ月分の部品が不良在庫になってしまう可能性がありますが、1ヶ月先までしか発注していなければ1ヶ月分の不良在庫に止まります。企業活動の中で「速い」ということは「百の問題を解決する」と言えます。

●運用在庫を少なくするのも「速さ」です。

「ものが工場に入ってから工場を出るまでの全てのものが在庫」ですから、在庫を少なくするためには、入りから出までの期間を短くします。

部品や材料が納品されても、全て揃うまでは着手できません。着手しても不良や手直しがあればスムースに工程が進みません。段取り替えに時間が掛かれば、製品が出荷されるまでの工期は長くなります。不要に滞留があれば、工期は長くなります。全ての作業の結果が工期であり在庫です。

TPiCS-Xでは運用在庫を「納入リード日数・製造リード日数」と「ロットサイズ」でコントロールします。それらの値を小さくすれば運用在庫を圧縮することが出来ます。

「計画管理」が実現出来ている状態だと、これらの設定を小さくしていくとそれ以上小さくできなくなる臨界点が見つかります。するとそこが在庫縮小の為のネックですから、それを改善していきます。

●一般的な生産管理システムには、直近の計画が変わったとき手配済みの部品や材料の計画を引き当てながら計画を再計算する機能が無いため、手配担当者が「勘と経験」そしてある時は「度胸」で、いわゆる必要数に上乗せをして発注します。言うまでもなく「勘」が外れれば不良在庫になるし、少なければ、変化に対応出来ません。「勘と経験」に頼る仕事は、冷静に考えれば本来あってはならない「仕事のやり方」の筈ですが、一般的な生産管理システムの制約から、そのような運用方法がどの製造業でも認められています。ある意味では「勘」の善し悪しが、仕事の評価の対象であったりする訳です。

TPiCS-Xには「設定されたバッファで変化に対応する」という機能があり、マスターを設定しておけば、所要量計算の中で自動的にバッファを確保し、また変化(内示と確定の差、或いは急な注文など)があった時には、それを利用して計画を立て、変化をバッファで吸収することが出来ます。

またそのバッファは、「基準在庫改善」機能により、常に設定値を適正に保つことが出来ます。「勘や経験」に頼る仕事ではなく、システムで管理された仕事に変えることにより無駄な在庫を減らし、なおかつ変化に対応出来る工場にしていきます。

 

 

(5)TPiCS-Xで、新製品の垂直立ち上げ、設計変更に対応する

世の中の変化が速くなり本当に売れる期間が短くなりました。販売チャンスを逃さないため、また売れ残りを出さないため、1日も早くフル生産できる様になることが必要になりました。試作図が出され、手配をして試作品を作る。それを何回か繰り返し、量産試作、量産へと繋げていく。その間も図面の変更は絶え間なく繰り返されます。

当然のことながらこの問題は、設計開発、生産技術など、生産管理以外の要素の方が大きい訳ですが、このような問題の中で、TPiCS-Xをどのように使い、「垂直立上げ」に近づけていくかをご説明していきましょう。

ポイントを二つ挙げます。

@          設計上の製品構成情報(E/BOM)を、生産管理の製品構成情報(M/BOM)へ、設計変更も含め変換する機能

A          試作も、繰返し生産もTPiCS-X一つで管理する

です。

 

CADExcelで持っている設計上の製品構成情報E/BOMを、生産管理の製品構成情報(M/BOM)へ、設計変更も含め変換する機能

TPiCS-Xの「CADデータ変換オプション」は、設計用の製品構成情報を生産管理用の製品構成情報に変換します。設計用の構成情報をCSVファイルに書出し、TPiCS-Xが読込み、生産管理用の製品構成情報に変換します。CSVファイルは、CADだけでなくExcelで部品表を管理していれば、Excelから書出すこともできます。

一般的に設計上の構成情報と、生産管理用の構成情報は異なるものとされています。

例えば、パソコンを生産するとしましょう。

設計者は電源スイッチを電源回路の子部品として扱うだろうと思います。

ところが、電源スイッチはフロントパネルに組み込まれていて、実際に生産する時は、協力会社さんに「フロントパネルAssy」として発注し、組み立て工程で、電源回路から伸びてくるリード線と繋げます。

このような作り方をする場合、生産用の構成情報では電源スイッチはフロントパネルの子部品にします。

これら構成の変更は、CADデータ変換オプションの画面の中で、ドラッグ&ドロップをするだけで簡単に行えます。生産用の構成にした後、TPiCS-Xのマスター(製品構成表、アイテムマスター)へ取込みます。さらに単価や発注先、ロットサイズなどを追加すれば、新しい製品として所要量計算することが出来ます。

これらの機能は新出図面を変換するだけなら、システム開発もそれ程難しいものではありません。しかし、設計変更の情報まで扱うようにすると、急にシステム開発は難しくなります。

電源スイッチが設計変更になりSW1からSW2に変わったとします。設計上の変更情報は「電源回路の子部品の電源スイッチSW1SW2に変えろ」という情報です。ところが生産用の構成上では電源回路の下に電源スイッチはありません。とにかく「SW1」を見つけて「SW2」に変更すれば良いようにも思えますが、実際にはそうはいきません。

パソコンの電源スイッチのように1カ所でしか使用されない場合や、複数箇所で使われていても全てが変更される場合は、問題有りませんが、同じ部品が複数箇所で使用される場合は、どこで使用されている部品が変更されたのか特定出来なくなってしまいます。

TPiCS-XCADデータ変換オプションは、両方の構成情報を一つのテーブルに持つことにより、構成情報が変わっても設計変更を生産用の構成情報に反映することが出来ます。

●では次に、その設計変更をどのようにして生産に反映するかを考えます。

個別生産の場合は、図面と製番の結びつきが強いので、TPiCS-Xでは製番をキーにして既に手配されているものとダイレクトに照合し、キャンセル伝票を発行したり、追加の伝票を発行したり出来ます。しかし、繰返し生産の場合は、変更時期を指定して生産に反映します。

その他にも仕様の変更は至るところで起こるため、システムとしてもそれらを処理できなければなりません。

          在庫及び既に手配されている分を使い終わった時から新部品に切換える方法(ランニングチェンジ、コストダウン目的の設計変更)

          時期(季節)により使用量を変える方法(食品の塩加減など)

          ある一定期間だけ異なる部品を使用し、その期間が終了したら元に戻す方法(季節限定商品など)

          図面の指示とは異なるメーカの部品でも生産できる時、他のメーカの部品を使う方法(電子部品などで良くあるケースです)

          お客様の要望で、今回だけ特別仕様で生産する場合

          作業伝票を発行し、生産指示をした後に変更する場合

          完成後に変更する場合

(本当に製品を改修する場合や、完成後マスターの間違えに気が付き、データだけを修正する場合など)

          設計変更ではありませんが、作る場所で構成が変わる処理

(社内生産と社外生産、生産する場所により手配方法が変わる場合)

設計変更は、資材の手配に影響を与えます。

変更前の部品は必要数が減り、新しい部品の必要数が増えなければなりません。

これは今前提として説明しているような設計変更の他、臨時の特別仕様で生産するような場合も、同じような処理が必要です。

臨時の特別仕様のような場合、生産管理システムのマスター(製品構成情報)に反映しないで処理することも出来ます。反映しないで処理をする場合は、構成情報の部品は不要になり、特別仕様の部品の手配をしなければなりません。

倉庫から現場へ部品の払出し指示をしますが、その場合も新しい部品が払出しリストに載らなければなりません。

また、完成時には資材の引落し処理に影響を与えます。

更にそれが完成し在庫になった後、異なるものとして扱わなくてはならないこともあれば、商品としては同じものとして扱うこともあります。

それらのシステム的な機能や設定方法は、説明が細かくなりすぎるのでこの小冊子の中では省略しますが、TPiCS-Xの中では全て処理することが出来ます。

 

■試作も、繰返し生産もTPiCS-X一つで管理する

繰返し生産の商品でも、試作の段階では個別生産的な管理の方が管理しやすい面があります。

TPiCS-Xは一つのパッケージで繰返し生産を主とした機能と個別生産を主にした機能(詳細は「個別生産編」)の両方があります。試作の段階は個別生産(製番管理)をし、量産になったら繰返し生産(所要量計算)として管理することができます。

個別生産の機能を使わず、繰返し生産機能で試作を管理する場合は、試作で手配したものは量産の所要量計算で引当てられては困ります。逆には、旧モデルと同じ部品の場合は、試作の分も一緒に所要量計算して注文書を出したい時もあります。

TPiCS-Xの中には、“所要量計算の引き当てから除外する”という機能があり、試作で使用する部品を“引き当てから除外する”扱いにしたり“引当てる”扱いにすることが出来ます。その設定は注残の段階でも、在庫になった後でも区分けすることが出来ます。

 

試作の段階から量産と同じシステムで管理すると「試作をしながら量産のマスターのチェックも出来る」ことになり、速やかな量産の立ち上げを実現できます。

正しいマスターを整備するのは、立ち上げ時期の変更が多い中、とても大変な仕事です。一歩間違えれば、部品の欠品が起きる、あるいは不要部品を手配してしまう。傾斜立ち上げなら、誤手配の影響も小さなもので済みますが、垂直立ち上げになると、被害も大きくなります。

 

■生産管理の難しさや大変さの本質は「変化・変更」にあります。

考えてみて下さい、半年前から何を幾つ作るかが決まっていて、仕様も全て決まっていたら、生産管理はとても簡単な仕事になりませんか。

「変化」とは「数量と時期の変化」と「仕様の変更」です。

「数量と時期の変化」は、f-MRPを中心にした計画管理の考え方で解決しますが、「仕様の変更」に関してもTPiCSは答えを持っています。

 

そして実際には、「数量と時期の変化」と「仕様の変更」が、交ざり合い混沌とした状態で押し寄せてきます。TPiCS-Xはそれらを当然のこととして処理することが出来ます。

TPiCS-Xを使って、生産管理の仕事を、速く、正確に、そして楽にして頂きたいと思います。


3.個別生産編

一口に「個別生産」といっても、それこそいろいろある訳で、個別生産を分類、整理するところから始めましょう。

まず“個別の度合い”という観点で考えてみます。

・顧客から注文を受ける度に全て図面を引いて、繰返し利用できるものがほとんど無い、よって社内に在庫はほとんど無い、このようなバリバリの個別生産の場合があります。

・あるいは、完成品としてはその都度異なるものだが、使用している部品や材料は同じようなものが多い。そこで、部品や材料はある程度在庫を持って生産するという場合もあります。

・ユニット化が進み、ユニットの組み合わせで対応するケースもあります。

・製品の殆どの部分は同じなのだが、銘版や付属部品、リード線などの一部が変わるだけの場合、

・さらには、作っている製品は量産品だが、社内の管理方法として個別管理(製番管理)をしている、といったケースまであります。

また一つの工場の中でも、製品によって個別の度合いが強いものと、弱いものが混在することも稀ではありません。

 

もう一つの分類方法として、部品集約度を考えてみます。

・沢山の部品を集めて製品を作る場合と、

・一つ(少し)の材料を加工して製品を作る場合、

即ち使用する材料や部品が多いか少ないかも生産管理の問題を考える上で大事なポイントです。

 

更に、一つの材料を加工する方法でも分類することが出来ます。

・その都度全く異なる形状、異なる加工方法の場合と、

・ある程度パターン化ができる場合とでも、

管理の方法が違い、TPiCS-Xの使い方も変わります。

 

この小冊子の中で全てのケースを網羅して説明することは出来ないので、繰り返し性はあまり無いが、部品や材料は複数(多数)使うケースを中心に説明致します。

 

なお、個別生産の機能を使用する場合は、「製番管理オプション」は必須です。

逆に、全く繰り返し性が無く所要量計算が不要な場合は、「f-MRPベーシックシステム」ではなく、「スモールビジネスパック」を中心にシステム構築なさると安価にシステムを購入することが出来ます

 

(1)TPiCS-Xで、短納期生産、変化に対応できる生産を実現する

TPiCS-Xで、新製品の垂直立ち上げ、設計変更に対応する

少数の生産を前提に説明するので「垂直立上げ」は、「短納期生産=全体工期短縮」という観点で、(1)項で一緒に説明いたします。

■では先ず、受注から出荷までの仕事を整理しましょう。

@          設計業務→出図

A          生産計画作成、手配業務、起票→発注

B          サプライヤーさんからの納品

C          外注作業、社内作業、組み立て完成

D          検査

などが挙げられます。

そこで、全体工期を短くするためには、

(A)それぞれの仕事を速く(短く)する

(B)仕事を並行しながら進める

がセオリーです。

 

■業務面の改善

●セオリー通り、先ず(A)仕事を速くする を考えます。

狭い意味で直接生産管理が影響するのは、A生産計画作成、手配業務、起票だけです。

繰り返し性が有る場合は、システムにマスター登録をしておいて、それを利用しながら部品展開や工程展開が出来ますが、繰り返し性が無い場合は「始めにマスターを登録して・・・」では、却って手間が増えてしまいます。せめてグループ化が出来れば、それをパターン化してマスターの様に登録し、そのデータを利用して手配データを作る方法もあります。グループ化すら出来ない場合は、ワープロのようにキーボードから直接入力することになります。その場合は操作性が命です。発注先の情報など、既に登録されているものは発注先コードを入力するだけでデータを引っ張ってこられるとか、それもリストから選択してドラッグ&ドロップできるなどがあれば日々の仕事はそれだけでも大分楽になるでしょう。しかし、これだけ発達したIT環境の中で、この機能だけでは不満が残ります。

 

そこで当社が開発したのが、CADデータ変換オプションと、一品生産オプションです。

CSVファイルに書出された設計用の製品構成情報をTPiCS-Xで読込みます。読込んだデータからマスター登録の操作無しに手配の元データを作成し、発注先や単価あるいは納期などを書込んで、ダイレクトに伝票発行データを作ることが出来ます。

CSVファイルは、CADが製品構成情報を持っていて、それをCSVファイルに書出せればCADから、あるいはExcelで部品表を管理していれば、Excelから書出し、それをTPiCS-Xで読込むことが出来ます。

この構成情報のデータは階層化されているので、新しい製品が既存のユニットを使う場合、そのユニットの図番を指定するだけでよく、その孫部品などのデータは不要になります。

このようにして、CADの製品構成情報、或いはExcelの部品表のデータがあれば、手配業務は大幅に改善されスピードアップが図れます。

 

●過去の類似データを利用する方法

過去に似た製品を生産したことがあり、その時のデータを利用できれば仕事は速くなります。過去のデータを利用する場合、今回はお客様の要求仕様が少し変わっていたり、古い部品は生産中止になっていて代替品を使わざるを得ない等、多少の修正があるものです。一品生産オプションでは過去のデータをコピーしてから、今回の仕様に変更し、伝票発行データを作ります。

 

●次は、(B)仕事を並行しながら進める を考えます。

これを考えると、設計と手配の関係が一番のポイントになるかと思います。

設計が全て完了していなくても、設計途中の段階で出来るところから手配を始めていく。

しかし、これらのことは既に多くの工場で、実践なさっていると思います。

ところが、これをなさる場合に一番ネックになる、或いは足を引っ張るのが設計変更ではないでしょうか。

生産管理の仕事は、一つ一つのことはそれ程難しいことではありませんが、沢山の要素(部品)があって、それがバラバラに動き、そして常に変化するので難しくなります。

このとき、先程のCADデータ変換オプションと一品生産オプションを使うと次の様な処理が出来ます。

設計変更のデータを受け取ると、

          上記手配用元データに、設計変更になり不要になった部品がマーキングされ、[不要]ボタンを押すと、不要になったデータだけが表示されます。

          新しく必要になった部品は、新しい手配用のデータが生成されます。

          不要になったデータを表示し、サプライヤーさんと対応策を相談し、その結果をそれぞれのデータに入力します。

          キャンセル出来ないものの中で、他に転用出来るものは製番の引き当てを解除し、転用出来ないものは廃棄処分にします。

          キャンセル出来るものはキャンセル伝票を発行します。

大量の手配データの中で、頻繁に発生する設計変更を、このように簡単に処理することが出来ます。

設計を急がせ、取り敢えず手配のための製品構成情報(E/BOM)を使って手配を行うと、設計変更のリスクは高まります。

その変更情報を、正確に、かつ速やかにサプライヤーさんへ伝えるのはとても大変で、結果的には誤手配や欠品の原因になり、却って生産の足を引っ張ることになりかねません。

しかし、TPiCS-Xではここまで設計変更をシステム処理できるので、この問題も解決できるようになりました。

 

■実生産面の改善

●先行手配製番

TPiCS-Xの製番管理オプションの中には、「先行手配製番(仕込み製番)」の機能があります。

コンポーネントや機能部品など、ある程度繰り返し性があるが調達や生産に時間が掛かるようなものは「先行手配製番」で手配しておくことが出来ます。

先行手配製番で事前に手配しておくと、後から受注が入り本製番を展開すると、自動的にその先行製番を引当てます。

 

●個別生産で短納期生産を考える場合、最も重要なことの一つが、部品や材料が計画通りに納品されるか否か、です。

言うまでもなく、部品が一つでも不足していれば出荷出来ません。

よって納期を短くするためには、部品が計画通りに納品されることが必要で、その為には、的確なフォローをすることが必要です。

そこで、次にフォローについて簡単に説明します。

納入遅れを防ぐためのフォローですから、遅れてから騒いでいたのでは仕事になっていません。TPiCS-Xには「予定・遅れリスト」があり、例えば、以前発注していたものの納期が近くなり、予定納期が来週(設定による)になった注残をリストアウトし、印刷は勿論ですが、それをサプライヤーさんにメールで送ることが出来ます。サプライヤーさんのメールアドレスを登録しておけば、TPiCS-Xの画面からボタン一つで全てのサプライヤーさんへ送信することが出来ます。その中には、納入遅れ分も含まれるので、確実なフォローが出来ます。

 

あるいは、戦略型納期調整オプションをお使い頂くと、サプライヤーさんに注文及び「納期回答依頼」をメールで送信することが出来ます。

サプライヤーさんは戦略型納期調整オプションのターミナルプログラム(無料)をお使い頂くと、そのメールを自動受信することが出来、納期の変更依頼もそのターミナルプログラムからボタン一つで返信することが出来ます。また返信された納期変更依頼をTPiCS-Xで自動受信でき、更にボタン一つでTPiCS-Xの注残データへ反映することが出来ます。

TPiCS-Xの注残データへ反映すると、納期を変更したことにより、もし前後の工程と逆転するような場合は、ガントチャートで赤色表示されるので、日程の再調整が必要なことが直ぐ分かります。

日程調整はそのガントチャートのドラッグ&ドロップで行うことが出来ます。このような場合の日程調整は、沢山の計画が巻き添えになってしまうものです。調整結果の連絡漏れがまた恐いのですが、戦略型納期調整オプションの場合は、調整が終了したら、幾つかのボタンをクリックするだけで、影響を受けた全てのサプライヤーさんへ、納期変更のメールを送ることが出来ます。

このようにして、計画を常にメンテナンスし、確実な、無駄のない計画を作っていくことが出来ます。

 

 

(2)TPiCS-Xで、現場の見える化を図る

見える化に関して、繰返し生産も個別生産も本質は同じです。

「見える化」を実現するためには、システムの中の計画データを常に実行計画に合わせる。そして、システムの計画通りに生産することが必要です。

 

例えば、ガントチャートで計画が見える。ガントチャートでその製番がどこまで進んだか分かる。システムにその機能があっても、データがデタラメでは、表示される内容もデタラメで「見える化」どころではありません。

 

次に、「見える化」の本質は、見えて何をするか、です。

TPiCS-Xのガントチャートは、着手信号機オプションの様に、ガントチャート上で○×△が表示され、今何が着手可能か分かり、次の行動に結び付けることが出来ます。

・またガントチャートの作業量表示を見れば仕事の負荷状況が分かるので、生産遅れになる前にスケジュールを調整することが出来ます。

・或いはサプライヤーさんからの延伸願い(遅れ情報)をTPiCS-Xの計画データに反映すれば、後工程に対し部品納期が間に合わないものが赤色表示されるので、問題箇所が直ぐ分かり、調整することが出来ます。

・これらのスケジュール調整をガントチャートのドラッグ&ドロップで行えます。調整した結果は自動的に納期変更伝票を発行したり、戦略型納期調整オプションを使えば納期変更データをサプライヤーに直接送信することが出来、恐い連絡漏れを防ぐことが出来ます。

 

システムの計画データを常にメンテナンスすることは、マスターを常に正しくメンテナンスするのと同じように大事なことです。

システムのデータを常に正しく保ち、システムに魂を入れ、そのデータを本当に活用するのは、大変ですがとても大事なことです。(詳しくは、繰返し生産編の「見える化」もご覧下さい)

 

 

(3)TPiCS-Xで、遅れの問題を解決する

遅れの問題に関しても、繰返し生産と考え方は同じです。

起きてはならないことを起こさないようにするためには、工場の安全管理の「ヒヤリ・ハット」と同じように、「遅延の予兆を見つけ、事前に問題を潰す」しかありません。(詳しくは、繰返し生産編の「遅れの問題を解決する」もご覧下さい)

個別生産の生産計画調整は、ガントチャート上で、前後の工程との日程計画の関連性や、作業量を考慮しながらマウス等で直接計画を修正します。

 

 

(4)TPiCS-Xで、在庫縮小と短納期生産を両立させる

個別生産でも、在庫の発生原因別に在庫縮小を考えます。

@見込み違いや手配ミス、あるいは設計変更などによる「不良在庫」

A日々の生産活動の中で自然発生する「運用在庫」

に分けます。

 

「不良在庫」を減らす

●必要な時に伝票を発行する

「当社は製番管理をしていて、手配は必要な分しか行わず、在庫は持たない方針です」という会社は良くあります。しかし期末に棚卸しをして在庫が全く無いという会社は、滅多にありません。

お客様からのキャンセルが無ければ、或いは設計変更が無ければ、また誤手配が無ければ、不要な在庫が生まれないはずです。

しかし“あって欲しくないこと”が無くならないなら、“あって欲しくないこと”が発生したときの被害を最小限にとどめるようにするのも重要な答えです。またそれこそが生産管理の真価が問われるところです。

製番管理の場合も、図面が出たら製番単位に全て発注してしまうのではなく、必要な時期が来るまでは発注しないことにより死蔵在庫のリスクは減らせます。

TPiCS-Xは製番管理で手配する場合も「伝票発行期間」の設定が働き、製番展開した後、各部品の納期から伝票発行予定日を逆算し、まだ注文書を発行するタイミングでないものは、伝票を発行しません。そのかわり毎日「伝票発行」の操作をしていると、注文書を発行しなければならない時期が来たものは、自動的に伝票データが作られ注文書が印刷されます。

手作業の場合「後で伝票を発行する」方法は、発行漏れの原因になるので、どうしても一度に発行してしまいます。また手作業をベースに開発したシステムだと、一度に発行する様に出来ているかも知れません。

もっとも、個別生産の場合は、後から注文書を発行するとサプライヤーさんからの納入遅れのリスクが高くなってしまう面もあるので、そのバランスを考えなくてはなりません。

 

●システムの在庫引き当て機能

計画的な在庫か、意に反した在庫かはともかくとして、手配処理をする時、在庫があればそれを引当てれば有効利用(在庫を少なく)出来、在庫は少なくなります。

手作業で手配業務を行うと「ついうっかり」忘れてしまうことが少なくありません。システムで処理をしていても一般的な製番管理システムの場合、在庫を引当てる機能が無いものも沢山あります。TPiCS-Xは製番に引当てられていない在庫を、次の製番の手配をする時、引当てることが出来るので、在庫を減らすことが出来ます。

 

●手配業務のミスを減らす

在庫を減らすためには、誤手配を減らすのも大事なことです。「短納期生産」の項では「処理が簡単になり、速くなる」ことを中心に説明しましたが、TPiCS-XCADデータ変換オプションと一品生産オプションの連係は「手配ミスを減らす」というもう一つの重要な効果があります。

言うまでもなく、誤手配が無くなればそれに起因する在庫もなくなります。

 

「運用在庫」を減らす

運用在庫は、「工場に入ってから出るまでの必然的に生じる在庫」と「急な注文に備えるための在庫」に分けて考えられますが、個別生産の場合の「必然的に生じる在庫を減らす」と「生産遅れ、出荷遅れを減らす」は殆ど同意義なので、「在庫」という観点で触れる必要は無いと思います。

●「急な注文に備える在庫」を減らす為には、当然の話ですが「必要性を吟味する」、あるいは「購入ロットを小さくする」ことが必要です。また、「使用する部品の標準化」も効果があります。

 

在庫部品の種類や、量が多くなった場合は、部品や材料だけをf-MRPで管理することも出来ます。TPiCS-Xは、アイテムにより製番で管理をしたり、f-MRP処理をしたり、その部品やユニットの性質により、組み合わせて(混合して)設定することが出来ます。また事前にf-MRPで手配した物を製番に引当てることも、製番で展開した結果、不足分があれば、f-MRPで手配することも可能です。これは種類や量が多くなった時は有効な機能です。

 

4.手前2週間を仮固定しながら生産計画を作る方法

TPiCSレポートNo79から抜粋

 

 

前回のレポートでも「即納体制、短納期生産について」と称して、今回と同じようなテーマで書きました。

しかし、多くの方から「難しくて分からなかった」と言われてしまいました。

「お客様のニーズに沿った生産」をしながら「計画生産」をし、それを出来るだけ少ない在庫で実現するということは、“システム”とか“狭義の生産管理”という次元の問題ではなく、「お客様の望むものをいかにして速く作るか」という非常に重要な問題だと思っていますので、今回 もう少しかみ砕いてご説明したいと思います。

前回のレポートで生産管理について考えると「どのようにして計画を作り、メンテナンスするか」は非常に重要だが、生産管理システムを検討なさる方が、その点にあまり興味をお持ちでないことが多いようです、と書きました。「原価」に関してはうんざりするほど質問を頂きますが、生産管理システムを検討なさる方が、例えば「お客様からどのようにして注文が入るか」を良くご存知なかったりします。

一般的に「生産管理システム」に期待されるものと、TPiCS-Xが提供しようとしているものが違うような気がします。弊社も株式会社で、一応営利を目的とする企業ですからお客様が望むものを作って売れば良いのですが、私自身「そんなものを作ったってしょうがない」「使ったって問題解決にならない」と思う気持ちの方が強く、なかなかその気になれません。

しかし目の肥えたユーザーには分かって頂けるので、それを心の支えに細々とTPiCS流のビジネスを続けています。(^J-)

「段取り八分」 という言葉があります。私はこの言葉が好きでよく使います。

言うまでもなく「仕事の成否は段取りで決まる」ですが、「段取り」を「計画」に置き換え、「生産計画の善し悪し」が「生産」の善し悪しを決めるという言い方をします。

しかし、なぜか計画作成機能があまり重視されない。その理由を考えてみます。

一般的なMRP系システムの場合、“マスタープラン”を人間が作成し、それをシステムにインプットし、所要量計算します。つまり一般的な生産管理システムには、システムを使って製品の計画を立てるとか、システムで生産計画を作る機能が無い(あるいは弱い)ため、ユーザーが生産管理システムに期待しなくなってしまったからではないかと思っています。あるいは、「システムでは無理」あるいは「そこは人間が考えるところ」と思い込み、システムに期待しないのでしょうか。

今回のレポートでは、是非「TPiCSってこんな使い方が出来るんだ」あるいは「考えていたようなことが出来そうだ」と気付いて頂きたいと思います。

弊社はパッケージメーカーの為、常にいろいろな生産状況を想定して考えます。説明するとき汎用性を意識すると、分かり難くなってしまいます。また、生産管理の話しはどうしても長くなりがちで「風が吹くと桶屋が儲かる」的な話しになってしまいます。

またTPiCSの成り立ちそのものが、初めから私の頭の中にあるものを絞り出し、汎用パッケージとして開発しました。どこかのユーザーの管理方法をシステム化し、パッケージにしたものではありません。その為、システム全体がいろいろな考え方や見方で使って頂けるようになっています。そこいらへんがTPiCSを難しく感じさせている要因の一つかとも思います。

 

■まず販売計画と生産計画の関連から考えていきます。

そもそも「販売計画」と名の付いたものが存在する企業と無い企業があります。販売計画がある企業でもその精度が良い企業(ケース1)も、悪い企業(ケース2)もありますし、販売計画なんて無くても過去の経験からおおよその見当が付く企業(ケース3)と、何が来るか全く分からない企業(ケース4)があります。

また販売計画を考える場合、計画期間の長さや、平準化の度合い、メンテナンスされるサイクルなども考慮に入れなければなりません。

ケース1で、十分な期間があれば生産計画を作る場合、大いに参考にしますが、ケース4の場合、あるいは計画精度が悪く当てにならない場合や、あっても非常に短期間しか計画が無い場合は、その情報を利用するのは難しいです。

今回のレポートでは説明をシンプルにするため、ケース4で、かつ即納しなければならない場合を考察の対象にします。

この説明を理解し、またTPiCS-Xの機能を理解すると、TPiCS-Xの所要量計算の最も大事な考え方を分かって頂けるようになり、「お客様のニーズに沿った生産」を行いながら「計画生産」をするという相矛盾する要求をかなえる具体的な方法を理解して頂けます。

 

■この用途を前提にした、TPiCS-Xの所要量計算の運用方法をご説明します。

TPiCS-Xの所要量計算は、製品の生産計画を仮固定しておき、日々受注データを登録し、所要量計算することが出来ます(実は「製品」に限らず部品でも中間製品でも仮固定することが可能で、それはTPiCS-Xの所要量計算の中でも非常に重要な機能ですが、それを書くと説明が分かり難くなるので、今回のレポートではそのような記述を出来るだけ省くことにします)。大量の受注が入り仮固定された生産計画ではお客様の要求を満たせない場合や、受注が急に止まり在庫が設定した値を超える場合、リストにして教えてくれます。

不足や在庫過多が分かったら、平準化や段取り等を考慮して生産計画を変更し、再計算をします。

また、TPiCS-Xの所要量計算は、受注した数量と同数の計画を、仮固定した期間が終了した翌日に立たせることが出来ます(ここが少し分かり難いと思いますが、詳しい説明は後述します)。所要量計算の結果を得て本日の伝票を発行し、確定処理を行うと、その計画数のまま仮固定期間が1日伸びます。これを1週間続けると翌々週に平準化前の生産計画が出来ます。毎週金曜日に、翌々週の計画の平準化や段取りの調整を行い生産計画とします。

同時に、必要に応じ翌週の生産計画を見直すことも出来ます。

翌々週の計画を調整するとき、各製品の週の合計値を変えないようにすれば、常に今週注文が入った数量だけ生産する計画を作ることが出来ます。この計画立案作業と同時に操業度の調整もすることが出来ます。つまり今週注文が沢山入りすぎて翌々週1週間では生産できないなら、次の週に繰り越さなければなりませんし、少なすぎるなら売れ筋の商品を多少多めに作らざるを得ないかも知れません。それらは経営の意志決定を経て計画に織り込みます。今週の処理で、翌々週多めに計画を立てても、次の週ではそれを差し引いた生産計画が立つので、在庫を注意深く見ていなくても在庫に偏りが生じることはありません。

製品の生産計画を作ったら2回目の所要量計算をします。1回目の所要量計算は製品レベルの計算で止め、2回目は中間製品や部品まで計算を行います。

TPiCS-Xは伝票を発行しなければ何度でも再計算することが出来ます。

このような運営をすることにより、「お客様のニーズに合わせた生産」をしながら「計画生産」を出来るだけ少ない在庫で実現することが出来ます。

 

■簡単な「運用の前提」を決めて、具体的な設定及びシステムの動作をご説明します。

@生産計画は週サイクルで(毎週金曜日)更新するとします。

A内示や販売計画は無く、日々入る注文をベースに所要量計算するとします。B注文は、本日 明日出荷の注文が入るとします。

C手前2週間は計画生産を行い 3週目の計画に売れ行きを反映するものとします。

D製品の作業伝票は翌日分の伝票を発行するとします。

E代表として取り上げる製品は、平均10個/日注文が入るとします。

(これらのことを考えるときは、初めは本当に毎日10個出荷するように考え、次にそれが日々変化した場合を考えます)

F当初その製品の在庫が5個有ったとします。

G取りあえず、ロットまとめしない前提で考えます。

Hリード日数などの考慮もしません。

Iまた、取りあえず製品の計画だけを考えます。

毎日10注文が入り、ロット纏めしないなら、毎日10個ずつ生産しているはずです。

とすると、生産販売在庫の数字は次のようになります。

本日(0日の金曜日)の夕方に月曜日出荷の10個の注文を受け、所要量計算したときに、翌々週の月曜(11日)に10の生産計画を立たせたい訳です。TPiCSの所要量計算は、固定期間を抜けた日に計画在庫が基準在庫に満たない場合は、それを満たすように生産計画を立てる性質を持っています。10日の計画在庫が95ですから、この場合基準在庫に105を設定しておくと、10の計画が立つことになります。

固定期間は、本日11日先を固定するので、11にします。伝票発行期間には、明日の伝票を発行するので、1にします。

この設定で、伝票を発行し、確定処理を行うと11日まで計画が仮固定されます。

それと並行し、10個出荷し、10個製品が完成している筈です。その実績をインプットします。

次に、本日が月曜日になり、今日は注文が多く13個の受注があったとします。

 

そこで所要量計算すると、今度は12日の火曜日には13の計画が立ちます。

これを1週間続けると、0日から4日まで毎日受注した数量が11日から15日まで生産計画として立っています。毎日の受注数は一定ではないので、立っている生産計画も多い日、少ない日があって平準化されていません。そこで、5日(金曜日)に平準化や段取りを考慮して計画を調整します。

 

■基準在庫と実在庫について考えます。

このような運用方法の場合、基準在庫には大きな値を設定しなければなりません。しかし、直ぐご理解頂けるように、本当に在庫として残るのは、もっと小さな数です。毎日10個相当注文があれば、この設定の場合5個程になります。

 

■受注数のバラツキについて考えてみます。

十分大きな基準在庫を設定したつもりでも、この設定のままだと、一度に大きな受注(16個以上)が入ると、直ぐジャーナルが出て、生産計画を変更しなければなりません。日々の受注数のバラツキを考慮すると、基準在庫はもっと大きな値を設定することになります。逆に少ししか注文が入らない場合は、翌々週の生産計画が少なくなり調整されます。

基準在庫の設定は多少難しいかも知れませんが、TPiCS-Xには「基準在庫の自動改善機能」があるので、これもシステムまかせにすることが出来ます。

 

■ロット纏めをした状態を考えます。

ロットサイズを30とします。おおよそ3日分を一度に生産することになります。別の言い方をすると、3日に一度計画が立つ(生産する)ことになります。(初期在庫は15あったとします)

0日の処理では11日に計画は立たなくても良いです。

今日も計画は立たなくて良いです。

2日(火曜)になると、仮固定した最後の日の計画在庫が95になり、基準在庫に105の設定をしておくと1ロット(30個)生産計画が立ちます。このようにロット纏めをする場合も、受注数に見合った頻度で生産計画が立つことが分かります。

 

■実際の運用イメージを考えます。

これまでの説明は一つの製品だけを考えて来ましたが、実際には沢山の製品があります。また、受注数ももっとバラツキがあるでしょう。ロットサイズももっと大きいかも知れません。すると、1週間の中でも生産しない製品もあったり、ある日の計画が大きかったりする筈です。それを週に一度調整します。その時、週の合計値を不変にしておけば、毎週末は常に設定した水準の在庫を持つことになります。逆に、もし合計数を変えた生産計画に調整しても、基準在庫を変更しなければその次の週の計画で再調整されるので、その週末は設定した在庫水準に戻ります。

子部品の計画は、製品の計画を仮固定する期間内であれば親アイテムから算出される必要数を基に計算される通常のf-MRPの計算になりますが、足の長い部品は、ここで説明した製品と同じようなロジックで計算されます。

TPiCSf-MRP所要量計算は、製品も中間品も末端の購入品や材料も、全く同じようなロジックで計算します。

これが「お客様のニーズに沿った生産」且つ「計画生産」を、出来るだけ少ない在庫で実現する方法です。

 

 

5.サプライヤーとの情報共有(戦略型納期調整オプション)

TPiCSレポートNo.70から抜粋

 

 

■短納期生産と計画管理について

短納期生産とは、顧客ニーズにレスポンス良く応え迅速に商品を提供することを目的とします。昔は製品在庫を持つことで対応していましたが、商品のライフサイクルが短くなり製品在庫が、死蔵在庫につながる危険が高くなりました。あるいは商品バリエーションが多くなり、製品在庫だけで対応するとあまりにも多くの在庫を抱えなければならなくなるなど、様々な理由により、むしろ顧客ニーズに対応して生産することを考えるようになってきました。

しかし、「富国強兵」の号令以降、ひたすら「大量生産と原価低減」だけを最重要課題と考えてきた日本の製造業の根本思想を変えていくことは難しく、また「大量生産と原価低減」だけを意識して作られたシステムでは、顧客ニーズにレスポンス良く対応するのは非常に難しいことです。

 

私は研修会でも「計画を守ることと計画を変えることは表裏一体、紙一重の差です」と説明しています。

大げさな言葉を使えば「管理の神髄」は、ルールを作り、そのルールを誰もがすぐ分かるようにし、皆がルールを守る。そのルールが悪ければルールを変える、ということです。

一般的な仕事の管理でも、生産管理でも同じです。

生産管理の中では「ルール」は「生産計画」です。「計画を立て、計画を明示し、計画を守る。計画を変更する必要があれば計画を速やかに変更し、変更した計画を必要な人に直ぐに伝える」言葉にして整理すると全く当たり前の話になります。この考えに異論を唱える方は、まずいないと思います。

しかし、その渦中に居ると正しい判断がなかなか出来なくなるものです。

それは、“頃合い”“度合い”“程度”の問題があるからかもしれません。

“正しい頃合い”の基準は、世の中の状況により変わります。その世の中の状況がアナログ的にジワーっと変わるので、「気がついたら時代遅れになっていた」ということになるわけです。

 

短納期生産を実現するということは、例えば「今日、明日の計画変更を行い、実生産に反映させる」ということです。その為には、計画をたてるサイクルも短くならなくてはなりません。また、変更するべき計画が「実現可能か否か? また問題があれば、それは何か?」を瞬時に把握しなければなりません。

つまり「コンピュータを使って、その実現性を計る」ことが必要になります。

TPiCSf-MRP計算は、単に必要数を計算するだけでなく、現在の生産計画で新しい状況に対応できるか否か、あるいは問題があればそれは何かを、ピックアップして報告する機能(問題点をジャーナルに印刷する機能)があるので、TPiCSの場合は、お客様のニーズをシステムに入力しf-MRP計算をしさえすればよいことになります。

 

しかし、ここからが今回のレポートの本題です。

もし、TPiCSに入っている計画がでたらめなら、システムがどんなに立派な計算をしてもその計算結果は意味のないものになります。

この話になると、「だからマスターは、正しく登録しなければならない」「在庫も合っていなければならない」という議論で終わってしまいます。

確かにマスターも在庫も正しくなければ使い物になりません。しかし、それだけで十分な訳ではありません。

計算させる生産計画全体が、実際にやろうとしている計画と同じでなければなりません。例えば、今回変更になる箇所だけをインプットしても、他は月初めに立てた計画のままだとします。実際にやろうと思っていない計画をベースに計算しても、その計算結果は何の役にも立ちません。生産の予定が無いものが生産計画に含まれたまま計算して「部品が足らないので生産出来ません」と報告されても、逆に生産しようと思っている計画が織り込まれていない中で部品が余ると言われても、全く役に立ちません。

通常は、昨日の生産計画があり、それに対し本日の変更点だけをインプットし、計算させます。ということは、インプットしない部分も常に実生産を反映したものでなければなりません。明日どこを変更するのか分からない訳ですからシステムに入っている全ての計画は常に実生産を反映していなければなりません。

 

もう少しわかりやすい例で説明しましょう。

例えば、部品メーカさんから「12月10日の納品分は、○○の事情で対応出来ないのです。半分だけでも3日遅らせてもらえないでしょうか」と泣きが入ったとします。TPiCSは基準在庫を補充するための発注があったり、ロットまとめした発注もありますから、半分くらいは遅れても問題がないことが沢山あります。その電話を受けた方は、ちゃんとTPiCSのデータを見て、問題ないことを確認してOKを出しました。そして自分のノートにもキチンと書き込みました。しかし残念ながらTPiCSのデータには反映しなかったとします。

その後、その部品を使用する製品が12月12日に追加になりました。子部品は12月11日に必要です。

しかし、部品は12月13日にしか入りません。このままでは追加分の生産は出来ないのですが、システムはデータが修正されないまま、つまり12月10日に全数入る計画のままなので、警告の出しようがありません。警告が出なければ、その追加計画は「問題なく作れる」と思ってしまい、必要な手を打つことは出来ません。

この問題は、2ヶ月先3ヶ月先の計画をターゲットにして考える場合、つまり納期が長い場合は、重要性が薄くなります。示した計画に問題があっても部品メーカさん側に時間の余裕があるので、何とか対応することが出来ます。それに対し短納期の場合は、出来なければ“出来ない”ことになってしまいます。

 

毎月開催している研修会でこのような説明をしたら、お若い方から「今の話を聞くと、先ほど二ノ宮さんが説明していた“計画を守る”という話と、矛盾するような気がします。どう理解したら良いのでしょうか?」という質問をいただきました。

短時間で説明するのは難しい質問です。「良い質問ですね」と言って、言葉を探します。「仰るように“出来ない”と言ってすぐ計画をギブアップしては、いけません。今度は逆に出来ないことが分かっているのに計画に反映しないのもいけません。こういう問題を考える場合、答えを出す一番良い方法は、原点に返って考えることです。我々はなんのために生産するのか、それはお客様に買っていただく為に生産するのです。買っていただけなければ、何もなりません。工場から産業廃棄物になって出るだけです。顧客ニーズに応えて生産する。そのために計画を守る。しかし守れない場合は、計画を変える。優先順位はこの順です。これを一言で表すと“顧客本意の生産を本当にやろうと思う。やろうと思う計画にする”という事になります」

 

これを私は「計画管理」と呼んでいます。計画自体を管理し、常に計画が実生産と一体になるようにします。

短納期生産の場合、これが非常に重要になってきます。

 

誤解がないよう、ここで断り書きを入れます。

どんなに速いサイクルで生産する場合でも、全ての部品や材料がそれ以上に短いサイクルで入手出来る あるいは全ての変化に対応出来る程の在庫を持てるなら「計画管理」の考え方は、重要ではありません。

 

■戦略型納期調整オプションについて

この考え方を理解していただいたとします。

しかしこれを速いサイクルの中で実現するのは、非常に難しい仕事です。

顧客から毎日注文が入り、それを基に毎日所要量計算をし、発注します。多くの部品があり、多くの取引先があります。目が回る忙しさの中に部品メーカさんから「出来る出来ない」「遅らせて欲しい」という「泣き」が入ります。これをこなしていかなければ、真の短納期生産は実現出来ず、生き残っていけません。

今回、私はTPiCS-X Ver3.1で、戦略型納期調整オプションを開発しました。この仕事を簡単に実現できるようにするためです。

戦略型納期調整オプションは、発注する側の「ホストプログラム」と受注側(協力会社側)の「ターミナルプログラム」の組み合わせで構成されます。

TPiCS-Xで所要量計算あるいは製番展開して部品や材料の注文データを作ります。注文データをホストプログラムが管理するデータベースに渡し、ホストプログラム経由で協力会社さんのメールアドレスへ「注文データ」あるいは「納期回答依頼」として送信します。協力会社さんのターミナルプログラムは自動受信し、ターミナルプログラムのデータベースへ読み込みます。

協力会社さんは、受信したデータを見て、対応の可否を検討し納期回答します。協力会社さんもTPiCS-Xを使えば(購入すれば)、それを受注データとして取り込むことが出来るので、そのまま所要量計算することが出来ます。

納期検討自体難しい仕事ですが、TPiCS-Xを使えば、f-MRP計算により、受注変動に備えた部品ごとのバッファを引当てても対応出来ない部品があれば、ジャーナルとして印刷されます。作業量山積みと、このジャーナルを見て検討し、必要に応じターミナルプログラム経由で納期回答(納期変更願い)をします。納期回答の返信も、発注側の会社のアドレスへ直接メール送信します。

発注側は、複数の協力会社さんから次々送られてくる納期回答を自動受信し、データベースへ読み込みます。

ホストプログラムの画面を見て“受け入れられない依頼”は備考欄にコメントを書き入れ「再検討依頼」で返信することも可能ですが、多数の協力会社さんから大量の納期回答(変更依頼)があると、その依頼が受け入れられるものか否かを判断出来なくなってしまいます。これもTPiCSが答えを出します。とにかく納期回答データをTPiCS-Xのデータベースに取り込んでしまいます。

この協力会社さんからの変更願いを反映しながら、お客様からの日々の注文を基に所要量計算を行います。

計算の結果、もし変更願いの納期では間に合わないならジャーナルとして教えてくれます。部品が絶対入手出来ないのであれば、お客様に納期の変更をお願いしなければなりません。あるいは再検討する余地があるなら部品メーカさんにもう一度無理を頼みます。検討と交渉の結果、本日の計画を決定します。ここで最初に説明した作業に戻ります。注文データを作り、確定処理をし、ホストプログラム経由でメール送信します。

 

通常のMRP計算では、部品メーカさんからの納期変更願いを織り込んで所要量計算をすることは“絶対不可能”ですが、TPiCSf-MRPは、全く自然な流れの中で処理してしまいます。そもそもf-MRPの計算ロジックでは、「計画を変えてはいけないもの」と「変えられるもの」が混在した中で計算するため、このような処理が可能なのです。

それに対し製番展開された計画にはf-MRPのような「魔法の計算」ロジックがありませんから、目視チェックになってしまいます。ホストプログラムのなかで、TPiCS-Xの注残データへ反映すると、納期を変更したことにより、もし前後の工程と逆転するような場合は、ガントチャートで赤色表示されるので、日程の再調整が必要なことが直ぐ分かります。

日程調整はそのガントチャートのドラッグ&ドロップで行うことが出来ます。このような場合の日程調整は、沢山の計画が巻き添えになってしまうものです。その連絡漏れがまた恐いのですが、戦略型納期調整オプションの場合は、調整が終了したら、また幾つかのボタンクリックするだけで、影響を受けた全てのサプライヤーさんへ納期変更のメールを送ることが出来ます。

 

今回「本気でやる短納期生産」を自分でも本気で考え、オプションまで用意し、実運用のストーリーをあらためて整理してみると、f-MRP(フレキシブル-MRP)のロジックのすばらしさを またまた再発見し、ウットリ自画自賛してしまいます。

 

【補足説明】

@          納期調整オプションを持ったTPiCS-Xユーザーをホストユーザー、ホストユーザーが使用するプログラムをホストプログラムと呼びます。

サプライヤーさんが使うシステムはターミナルプログラムと呼び、ターミナルプログラムはホストユーザーがサプライヤーさんへ無料で配布することが出来ます。

A          双方に、専用のメールアドレスが必要です。

B          データの送信は、それぞれのシステム画面の[送信]ボタンで行い自動送信します。受信もそれぞれのプログラムが、設定された時間間隔でメールサーバから自動受信します。

C          ターミナルプログラムのユーザーもTPiCS-Xを購入すると、納期回答依頼のデータを「受注データ」として扱い、それを元に所要量計算することが出来ます。そしてそのユーザーが戦略型納期調整オプションもご使用になると、孫メーカさんと納期回答依頼と回答納期を授受できます。

D          それぞれのプログラムはデータを受信すると、ユーザーの操作とは無関係に、受信したことを連絡するデータを自動的に返信します。

 

 

6.現場指示と平準化(着手信号機オプション)

TPiCSレポートNo.68から抜粋

 

 

前回(No.67)のレポートを発行してから「なんとかこの問題を解決出来ないか」と、一生懸命考え、私なりの答えを見つけ、その機能を早速TPiCS-X Ver3.0へ織り込みました。

 

TPiCSの仕事を20年近くやって来ましたが、今回の機能追加は、TPiCSの歴史の中で、また一つエポックメイキングな仕事だと思っています。

 

はじめに、解決しようとした問題そのものを簡単に説明します。

TPiCSに限らず、新しく生産管理のシステムを使うとします。生産管理のシステムを使うということは、その指示に従って部品や材料を発注し、生産するということです。

システムの指示に従って生産する場合、出された指示(計画)の日別の作業量が平準化されていない状況を考えます。例えば、今日は10,000個、明日は100個生産しなさいと言われると、今日は徹夜で仕事をするが、明日は昼過ぎには仕事が無いことになってしまいます。実際にものを作る現場はこれでは困るので、現場から「どうすればいいのだ」と言われてしまいます。

この問題を解決するためには、「平準化された計画を作る」、あるいは「資源(人員能力や設備など)の割付を考慮した計画を作る」ということになります。

しかし、それは非常に難しい仕事です。

@TPiCS-Xには、自動平準化オプションがあるので、ある程度平準化した計画を作ることが出来ます。しかしそれは、完璧なものではありません。

ATPiCS-Xにはスケジューラと連係する機能があります。しかし、実際にはスケジューラの運用もなかなか難しいようです。

B最もベーシックな解決策として、生産計画を人手で平準化します。TPiCS-Xは、計画表の中でもドラッグ&ドロップで計画日を進めたり遅らせたり出来るので、かなり操作性は良くなっていますが、それでも工程が深くなり、さらに共通の工程が有ったりすると大変な作業になります。

C次の解決策が、前回のレポートの話の「現場にまかせる」です。「現場の裁量で調整してもらう」ために、確定期間を長めにして運用しますが、それによる悪影響も大きなものでした。

D最後の解決策も、前回のレポートにありました「システムとは違う計画で生産する」です。システムは部品手配にだけ使い、現場への指示は別の計画でおこないます。前回のレポートのケースはTPiCS-Xの計画対応実績と在庫対応実績の機能を誤用し、おかしな結果になった例でした。

いずれにしても、解決は難しく生産管理システム運営の現実的なネックでした。

何とか解決する道はないか。簡単なロジックで実用になる方法はないか。100点とれなくても良い、80点でよいから、簡単な解決策はないか。だれでも考えそうな方法では、答えが出せないのだから、全く違うアイディアはないか。一生懸命考えると、ハッとヒントが頭の中に浮かぶものです。

 

まず、私の解決策のポイントをご説明します。

現場は生きています。時々刻々変化する状況をシステムに取り込み、その中で各工程の平準化され整合性を持った計画をリアルタイムに計算し、指示するのは非常に難しいです。

逆に、現場の方は、とにかく「今日、何をどれだけやれば良いか」が判れば良いわけです。なにも“箸の上げ下ろし”を決めてくれと言っているわけではありません。「今日、何をどれだけやれば良いか。今何が出来るのか。今日やる仕事の中で出来ないものがあれば、それはなぜ出来ないのか。いつならできそうなのか。そして何を急ぐのか」が分かればいいのです。欲しい情報を提供しさえすれば、あとはその時その時の状況で判断してくれます。

ここまで考えが整理できれば、あとは簡単です。

TPiCS-Xには着手信号機オプションがあります。

そもそも着手信号機は、「今日、何をやれば良いか。今何が出来るのか。今日やる仕事の中で、出来ないものがあれば、それはなぜ出来ないのか。いつならできそうなのか。そして何を急ぐのか」の情報を明示する為のものです。今の着手信号機に無いのは「今日やらなくてはならない生産レベル(ノルマ)を明示する機能」だけです。

 

では、どうやって生産レベルを計算し表示するかの説明に移ります。

平準化できていない生産計画を平準化したとすれば、平均値の作業時間になる筈です。生産する順序があれば、平準化すると、その順序のまま計画日がずれることが望ましい訳です。この平均値を生産レベルと考え、生産レベルに達する作業を、優先順位の順に、かつ着手可能な作業だけを選択すれば、それがノルマになります。これをリアルタイムに現場に指示できれば、目的が達成されることが分かります。

 

向こう何日間の平均値を取るかは、ユーザーにより異なります。私は、今の時代、一週間サイクルが適当だと思いますが「組合との関係で、一ヶ月間は平準化したい」 というユーザーもあるかもしれません。

[システム環境設定]-[業務処理方法]-[着手信号機]の「製造担当ごとの生産レベル集計期間」で、平準化期間を設定できるようにしました。

そこで、以降は一週間サイクルで生産レベルを決定する運用を前提にして説明します。

 

@現場の要所要所にパソコンを置き、TPiCS-Xの信号機を使えるようにします。


信号機の画面の中には、各現場のオーダーリリースされた生産指示データが表示されます。

 

A事務所で、毎週金曜日に、現在の生産計画から、来週の作業量の平均値を計算します。

B各現場の信号機の画面で、[仮数]ボタンにより、

生産レベルに見合う分、作業指示データの仮数フィールドに生産数量が書き込まれます。

C仮数には、前工程が途中までしか終わっていない、あるいは全部品が揃っていないときは、生産可能な数量が書き込まれます。

Dまた、午前中の仕事を終え、午後になってから、もう一度[仮数]ボタンをクリックすると、午前中に終えた仕事の分は差し引いて、残りの生産レベルに相当する生産数だけが仮数に書き込まれます。

E仮数を埋める順序は表示する順序に従いますが、表示順を自由に決めることが出来ます。そして信号機は、ソートするキーの値を後工程が操作することも出来ます。(後工程から未完の前工程に伝言を送る機能)

F昨日以前の仕事で、残っているものがあれば、赤色表示され、明日以降の仕事は紺色表示されます。

Gさらにこの機能は、Ver3.0で追加された「払出し管理」の機能と連動しますから、現場に払出しされた部品の数を元に、着手可能数を計算することが出来ます。

 

生産レベルの集計方法に関しもう少し、説明を加えます。

@生産レベルは、現在の生産計画から計算します。

在籍する作業人員から計算するのではなく、必要とされる生産計画から計算します。

もし、人員能力が不足するなら、他の部署に応援を頼みます。それが出来なければ、生産計画を修正します。つまり、来週の計画から、翌々週の計画へ移動します。後ろにずらすことが出来ないなら、残業をするか、徹夜で生産するしかありません。

A逆に、仕事が少ない場合は、今流の考え方は「注文が無いのだから、無駄なものを作ってもしょうがない」です。他の部署に応援に出るとか、機械や設備の整備をするなど となりますが、現実的にはそうもいかないと考えるなら、集計した生産レベルを調整し、かさ上げします。これは誰かが意志を持ってやらなければならない仕事です。

B今週の生産が既に遅れている場合。

例えば、金曜日の時点で本日中に挽回できない遅れがあれば、来週の生産レベルに挽回代(しろ)を用意しなければなりません。

集計した来週の作業時間は、製造担当マスターの中に書き込まれますが、直ぐ隣に今週の作業時間と本日の残りの作業時間が表示されるので、残りの作業時間が大きければ来週の作業時間を少し大きくしておかなければなりません。

 

この仕組みをご理解頂くと、元々の生産計画が平準化されていないと、結果として遅れ進みが発生するのが分かります。平準化の誤差も、遅れ進みも、0にすることは出来ません。要は、遅れ進みの許容限度と平準化の度合いのバランスです。

その他、着手信号機を使うと、例えば「同じ型を使う場合は纏めて生産したい」とか、「赤から黄色へ変わる場合より、赤から白へ変わる方が効率がよいので・・・」という問題も、従来とは全く違う方向で答えが出せるなど、着手信号機には、まだまだ沢山の機能がありますが、説明の焦点がぼやけるので、「現場への指示と平準化」に関する説明だけに止めます。

 

以上が、TPiCS-X Ver3.0の着手信号機で実現した「現場への指示と平準化の問題」に対する答えです。

 

 

7.5Sと生産管理について

TPiCSレポートNo.73から抜粋

 

 

■生産管理に携わる人なら誰でも知っている“5S”について考えてみます。

私も若い頃は、“5S”を半分バカにしていたところがありました。

「整理、整頓なんて当たり前の話じゃないか。大の大人が今更そんなこと言わなくたって・・・」

しかし、年を取るにつれそれらの基本的なことがいかに大事であるか、またそれをきちんと実行することがどんなに難しいかが、よく解るようになりました。

 

“誰かに言われたから”とか、“何でこんなことまでしなければいけないのか”では、絶対に短納期生産は実現しません。

短納期生産を実現するのは難しいことです。

“イヤイヤやる”ようでは、それを実現するためのアイディアが出ないからです。

私は「TPiCSは難しい」と言われると「TPiCSが難しいのではなく、キチンと生産を管理(コントロール)することが難しいのです。短納期生産を実現することは更に難しいから、TPiCSがことさら難しいと感じてしまうのです」と申し上げます。しかし、毎月開催している研修会の中では 他にも説明しなければならないことがたくさんあるので「短納期生産を実現するためには、まず“顧客本位の物作りを本当にやろうと思うこと”が大事です」程度の話にとどめています。

 

“5S”というと、現場の資材や仕掛かり、また治具や工具など現場で使用するものを、常に整理 整頓 清掃し清潔に保ち、それを自ら進んで出来るよう躾を行うことですが、私はこの適用範囲を生産管理システムのデータやインプット作業にも拡げて考えれば良いと思っています。

私は従来から、生産管理は健康管理と似ている、と言ってきました。

適度な運動をし、バランス良い食事をとり、酒やたばこを適度におさえ、・・・・

と、やらなければならないことは全て解っている。しかし、それを毎日実行するのが難しい。

また、生産管理の難しさは多少血圧が高くても、多少血糖値が高くても、毎日生活できてしまい、自覚症状があまり無い、あるいは「皆こんなもの」と諦めてしまう。

しかし、以前のようにゆっくりしたペースで仕事できる時代なら多少コレステロール値が高くてもやってこられましたが、昨今のように速いスピードでものを作らなければならない持代になると、慢性病を抱えていて駆け出すのと同じようなものですから、それは出来ません、と 最近は言っています。

 

前回までのレポートで、短納期生産を実現するためには、計画をきちんと管理すること(計画管理)が重要です、と述べてきました。

短納期生産をするということは、生産計画を日々変えることになります。

その生産計画は、実行可能なものでなければなりませんから、日々新しい計画の実行可能性をシミュレーションする必要があります。

シミュレーションの結果が意味あるものであるためには、シミュレーションする計画が実態を表していなければなりません。

ということは、

○システムの中の生産計画に従い、全ての人が動かなければなりません。

○日々変わる計画が全て、システムの中の生産計画データに反映されていなければなりません。

計画を立てる側の変更を全て織り込まなければならないのは当然ですが、部品メーカさんからの納入遅延情報も、全て生産計画データに反映させなければなりません。なぜなら、納入遅延情報がシステムの計画データに正しく反映されていなければ、その部品は古い計画通りに納入されることを前提に計算されてしまうからです。

昔のように、3ヶ月先4ヶ月先の納期の部品を発注している時には、部品メーカさんが注文書をもらってから納品に問題があることを発見しても、納期まで時間がありますから、何等かの手を打って解決することが出来ます。しかし、部品の発注リードタイムを短くしていくと、注文書を受け取った時には、「もう間に合わない」状況になってしまいます。

短納期化をどんどん進めていくと、部品メーカさんから納期遅延を申し出るケースが増えてくるはずです。申し出が少ないうちはその都度個別に対応すれば良いですが、多くなるとシステムとしてきちんと処理出来なければなりません。

それを実現したのが「戦略型納期調整オプション」です。

 

やらなければならない背景がはっきりしました。道具も揃いました。しかし、やらなければ何事も始まりません。

と言いながら、「ただやればいい」という訳にはいきません。

しっかりルールを決め、皆がそれを守らなければなりません。

基礎データを“整理、整頓”し、誰が見ても解るような状態にし、不要になったデータは直ぐに消し、サーバに登録されているデータを、常に生きている状態にしておかなければなりません。

これが、データの“5S”です。

 

■先日ご来社下さったお客様との会話です。

アメリカの会社の日本法人で、アメリカの本社から主要部品を輸入して、日本で組み立て調整をしている会社です。

「あるネックになる部品をアメリカから輸入していますが、その部品の生産が難しいらしく、しょっちゅうトラブルが発生し、直ぐ納期が変更になり困っています。生産数量や機種も増えてきたのでそろそろシステム化しなければならないと思うのですが、あまりしっかりした考え方のシステムだと当社の状況では、むしろ使えないのではないか、少しいい加減なシステムの方が良いのではないかと思っているのですが・・・」と、仰います。

正直に言って初めてのケースです。私の「計画管理」の考え方と、全く反対の考え方、あるいは「計画管理」の考え方を実践するのが非常に難しそうなお客様です。

私はいつものようにTPiCS-Xの説明をします。そして最後に戦略型納期調整オプションをご覧に入れて、計画管理の重要性をご説明します。

「どんなにアメリカからの納期回答がイイカゲンでも、それを放っておいてはいつまで経っても問題は解決しません。お話の様子だと、問題の部品はそれほど多くないようなので、こまめに計画をメンテナンス出来ると思います。1万点の部品の納期が全てコロコロ変わり当てにならないなら、やりようはありませんが、少数の部品だけが問題なら何とかなります。それぞれアメリカから納期回答や変更の連絡があったら、このように生産計画表の中でドラッグ&ドロップするだけで良いのです。これなら出来そうでしょ」と申し上げます。

すると「確かにやることをやらなければ問題は解決しないですね」と仰って頂きました。

計画がコロコロ変わるとき、それに対応する考え方は2つあります。

@「どうせ変わるのだから、計画なんか作る必要はない」という考え方。

A「コロコロ変わる計画を常にフォローアップし、シミュレーションをし、前向きに計画を作って行く」考え方。

TPiCS、我々の考え方は、Aです。

それを実現するためには、速い計算スピードと、簡単に処理できる操作性が必要です。

システムを開発する我々も大変ですが、この考え方で仕事をするユーザーも大変だと思います。だらだらとした仕事ではなく、きちんとした仕事をする。システム利用の“5S”が必要です。